言えない恋じゃないけれど(スア) 64

「「あ・・・・・」」 

キエとスングが同時に声を出した。 

「キエの知り合い?」

 見知らぬ高校生が自分の妻と会話をしているところに遭遇しているのに、キエの夫は落ち着いた態度で二人がいる病室に入って来た。 

「ん?君・・・・何処かであったようだけど・・・・・」

 キエの夫とは一度も会った記憶が無い。

 いつも仕事で忙しいから、スングの学校が終わって二人で会っている時に遭遇したこともない。

 僅かな記憶の中でキエの夫と遭遇したと思われる時は、たった一度だけある。 ツワリで苦しんでいたキエを自宅まで送り、帰る時にすれ違った男性。

 数日前の出来事だから、言葉も交わさなかったが記憶の中に残る男性と似ていた。 


「先日、キエさんを自宅まで送って行った時にすれ違いました。」 

「あ~ぁ、あの時・・・・君が送って来てくれたんだ。ありがとう、キエもツワリで苦しいけど買い物をしたら気持も晴れると思って外出を許していたかね・・・・・助かったよ。仕事で忙しいと言う理由でキエを放っておき過ぎたと反省しているよ。」

 気まずい・・・・・・ そう思っているのはスングだけじゃなく、キエも同じだった。 

「彼ね、母の親友の息子さんで、私の担当をしてくださっているペク・スンハ先生の弟さんなの。」 

「そうかね・・・・偶然とはいえ、ペク先生や君のお父さんの教授には、病室の手配ではお世話になったよ。いつかお礼に伺うから。」

 優しい物の言い方ではあったが、最後のお礼に伺うと言う言葉は、スングにここから帰って欲しいと言っているようだった。 


「キエさんの顔を見る事が出来たので、これで失礼します・・・・・・・」

 「追い出すようで悪いね。学校が休みの時にゆっくりできるだろうから、その時にいらっしゃい。」

 冷静でまるで自分の父の様に堂々としているキエの夫に、スングは何も言う事が出来なかった。

 病室を出て行く時にキエの顔を見ると、申し訳なさそうにしているが、夫が来たことが迷惑だった様には見えなかった。 


気まずい空気の中で、最初に口を開いたのはキエの夫だった。 

「彼か?君が好きだと言う男は。」 

「そう・・・・私が本屋の駐車場で気持ちが悪くなった時に、家まで送って来てくれたのが彼よ。」 

「まだ高校生じゃないか。君は母親だろ?10歳も年下の子供に恋心を抱くのはおかしくないか?本気ではないよ、彼への思いは。お腹に子供がいて、自由が無いからその自由を持っている高校生の子供が羨ましく思うだけだ。彼の将来の事も考えて、簡単に私と離婚すると言う事を口にしない方がいい。」 

「本気よ・・・・」 

「本気と思い込もうとしているだけだよ。君とは恋愛結婚ではなくて、私の想いだけで見合いをして結婚したが、君は好きでもない男と結婚はする人ではないだろう。私の伴侶としてやっていけるから、結婚を承諾したはずだ。若い男に興味を持ったことには何も言わないが、いい母親になって欲しいよ。」

 夫に反論がキエには出来なかった。 

歳が15も上だからなのか、いつも冷静に物事を考えている。

 確かに結婚を承諾したのは夫の言うとおり、伴侶としてこの先もずっとやっていけるからだ。 

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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