言えない恋じゃないけれど(スア) 67
もう大人とまだ子供との違いが、はっきりと判った数分だった。
キエさんはこれからどうするのだろう。
病院を出ると、キエとよく待ち合わせをしていた本屋に自然と足が向いた。
自然と目が行く、妊婦の女性。 みんな母になるからなのか、綺麗な表情をしている。
キエはツワリで苦しみ、幸せそうな顔よりいつも辛い顔をしていた。
「スング!」
突然声を掛けられ振り向くと、スアとスンハが立っていた。
「失恋したの?」
「何だよ!どういう意味だよ。」
「それが姉に言う言葉?ギルとミニョンさんのお見舞いから帰るスアに会って一緒に帰ろうと歩いていたら、キエさんの旦那さんと話をしていたのを見かけたの。」
スアが余計な事を言ったと思いスングはギロッと睨むが、スアは舌を出してスンハの後ろに隠れた。
「双子が双子に失恋したなんて、マンガみたいな話よね。スングはキエさんを小さい頃から知っていたし、スンミと同じように姉として好意を持っていたのかもしれないし、本当に好きだったのかもしれない。それにね・・・・妊婦はこれから母になる不安がいっぱいで、精神的にも不安定になるの。そんな時に、若くて元気のあるスングがツワリで苦しんでいる自分を心配してくれて、それが嬉しくて好感を持っていた。キエさんは、優し過ぎる旦那さんに甘やかされているから、厳しくしてもらいたかったって・・・・・今日点滴をしている時に私に言ったわ。双子の姉として仕事で忙しい母の代わりに弟の面倒を見ていたから、夫から優しくされればされるほど、子ども扱いされているっていつも思っていたって言ってたわ。スングの事は本当に好きだったけど、スングの未来を摘み取りたくないって・・・・・・スングの為にでもあるし、生まれてくる子供の為に母になる事に決めたキエさんの気持ちを判ってあげてね。」
母の様に、時々年の離れた姉はさりげなく弟を励まし力づけてくれる。
「ほら、好きな本を買ってあげるから元気を出しなさい。インハには内緒だよ。子供よりも弟に本を買ってあげたことが判ったら、あの子口を聞いてくれないからね。インハがしゃべらないと、インも兄の真似をして私としゃべらなくなるから家の中が暗くなるの。バカみたいに話す私のいる場所が無くなるから、絶対に言わないでね。」
スンハは自分の子供と同じ年の妹と弟に、姉として出来る励ましをして、両親を困らせて結婚した自分の償いをしたかった。
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