あなたに逢いたくて 58
「奥さん、ハニの気持ちを判ってやってください。スンジョ君が立派な医者になることだけを思っていたハニのことを。自分の孫のスンハに会いたいかもしれませんが、時が来て、ハニが奥さんやスチャンにスンジョ君にすべてを話そうと思う日が来るまで知らない振りをしてください。」
スンハのことを知る時はいつになるのか誰もわからないが、グミもギドンの必死な願いを受け入れるしかなかった。
スチャンに知れたら、自分が倒れなければと責任を感じてしまうと思い、この事はグミとギドン二人だけの秘密にした。
看護師試験当日_____
二年ぶりに見るパラン大学は、懐かしさもあるがスンジョと過ごした思い出も沢山あった。
「スンハ、オンマの試験が終わって、ここに来るまでキム先生と待っててね。キム先生、スンハをお願いします。」
ハニに抱かれていたスンハはジョンスの首に可愛らしい腕を伸ばして巻きつくようにいていた。
「ハニさん、試験頑張ってください。あんなに勉強したんですから、絶対に受かりますから。」
どんな時も、ハニを温かく見守ってくれていたジョンスの為にも頑張ろうと思った。
試験会場は、スンジョが通っている医学部の校舎の中だった。
答案用紙と問題が配られ、試験開始の合図でハニは大きく深呼吸をして問題を開いた。
「おい、スンジョ。お前まだオ・ハニを探しているのか?」
スンジョが医学部専用の図書館で本を読んでいると、同じグループの仲間が聞いて来た。
「ああ・・・・・・」
チラリとも見ないで、本を読んでいた。
「オ・ハニが来てたぞ。」
その言葉にスンジョは、その仲間に掴みかかるように勢いよく立ち上がった。
「ほ・・本当か?」
「ああ、随分と女っぽくなってたけど間違いない。もうそろそろ試験も終わるから、中庭の方に出てくるんじゃないかな?」
スンジョはその言葉を聞いて、読んでいた本をそのままにして図書室を出て行った。
「おい!!でも行かない方が・・・・・・取り乱したアイツを見るのは初めてだな。」
「お前もオ・ハニを見たのか?」
何人かの学生が、ハニを見たと言っていた。
その中の一人が見たことをもう少し早く聞いていれば、スンジョがこれから見ることになるハニとジョンスの様子でショックを受けることもなかった。
「オ・ハニ、こっちの大学を出てから結婚したのか指輪をしていたな。旦那と子供も一緒にいた。」
「あ~あ、それで妙に色っぽかったのかな。」
誰もスンジョの心配をする事もなく、ハニの変化に驚いたことを話していた。
スンジョが中庭の方に行くと、丁度試験の終わった受験生が出て来ていた。
受験生の中にハニの姿を確認をしてスンジョが近づこうとした時、子供の声が聞こえて来た。
「オンマァ~」
(オンマ?)
その声を聞いた時、それまで試験で疲れた顔をしていたが、聞こえた声とそこにいる人物に気が付くと、声の方に向かってハニの顔がパッと明るくなった。
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