言えない恋じゃないけれど(スア) 74
スンスクと子供たちは自分達家族が過ごす部屋に入り、いつも通りの親子の時間を過ごしている。
初めて両親と向き合って話をするわけではないが、スングとスアは緊張をした顔でソファーに座っていた。
「そんなに緊張をしなくていいぞ、別にしかるわけでもないから。」
そう言われても、母から父の書斎で進路の話をしたいと言われたら、緊張しない方がおかしい。
「おばあちゃんに言われたよ。スングに日本の大学に行かせてやって欲しいと。」
「お父さん・・・・・・・」
「お母さんが言った事は、頭の中に入れておいてほしい。6年で無事に学業を終えてもすぐに一人前の医師にはなれないことは判っていると思う。自分で決めた道を信じて、どんなことがあっても夢を実現して来なさい。」
「お父さん・・・・ありがとうございます。おばあちゃんが万が一の時はすぐに戻って来ます。」
スンジョはスングの顔を見て、ニッコリと笑った。
「6年は大丈夫そうだよ、おばあちゃんは。自分でそう言ったけど、案外本当にそれくらい生きるかもしれない。ファン・グミは自分がこうと決めたら実現するからな。」
父が冗談っぽく祖母の事を言ったが、冗談ではなく本当にそうなってしまうところは母と似ているが、本当に祖母なら自分の命も伸ばすことが出来るかも知れない。
「で・・スアは大学には行かないのか?行かないで本当に毎日お母さんと一緒に家事をして過ごすのか?」
「うん、大学に行って何を勉強をしたらいいのか判らないし、アッパやお姉さんたちみたいに医学部に行くつもりもないし、将来何になりたいのかも判んない。勉強をするのなら、本を読んで知識を得てもいいし、大学に行きたいと思ったらその時にまた考えてもいいかなぁ・・・・・・って・・・・・・」
「誰か好きな人でもいるのか?」
「えっ・・・・・え・・・・べ・・べ・・・・・・・」
父のいきなりの質問に、スアは焦って言葉が出なかった。
そんな所はスンジョからだけではなく他の兄妹がよく言っていたが、本当の事を言われた時の母の動揺する様子とよく似ていると。
「スア、好きな人が出来たの?」
「誰だよ、ソイツは・・・・・まさか、あの看護師か?」
両親はスアとスングが、この間までミナの子供のギルとキエが好きだった事は知らない。
知っているのは、スンハとスンスクだけ。
口が軽いようでも、スンハは二人の今の恋愛はすぐに終わると判っていたから、両親には何も言わなかった。
いつかは自分たちに見合う相手ができる事を、姉として年が離れた双子の親代わりとしてそう感じていたから。
「好きって言うか・・・・・・いい人だよね、ミンスって・・・」
「ミンスなの?ミンスが好きなの?」
「ミンスって・・・・今年看護部に入って来たミンスか?」
母が知っているのなら当然父ならどんな看護師か判る。
祖母が親しく話をしている看護師だから、きっと父はもしスアが好きになっても反対はしないとスアは思っていたが、隣で不機嫌な顔をしているスングが一番気になった。
またスアはオレに気持ちを隠していたんだ・・・・・・
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