言えない恋じゃないけれど(スア) 75
いつになってもグミの思うとおりに物事は進んで行くが、不思議とそれは間違っていないことが多かった。
一番グミの思い通りに進み成功なのは、スンジョとハニが結婚し7人の子宝に恵まれた事だ。
その子供たちは皆素直でとてもいい子供たちで、グミはハニの力の素晴らしさに息子の嫁に選んで良かったと思っていた。
検査入院で退屈をしていたグミも、一番年下の孫の新しい恋の行方が気になっていたのが薬になったのか、パラン大の医師の診断が誤診と思われるくらいに元気になっていた。
スングは年末から日本の大学を受験するために、父の従兄弟の智樹の家に行くことになり、ペク家が静かになるのかと思っていたら、慌ただしくスアの婚約が決まり、高校を卒業と同時にグミを担当していた看護師と突然結婚することになった。
広いペク家のリビングは、兄や姉とその配偶者の実家から、スアの結婚のお祝いの品で溢れていた。
「ドレスは本当にオンマが着たものでいいの?もう40年以上前の古い物よ。
デザインだって流行遅れだし、スンハもスンミも一緒に一度の結婚だからって、新しく作ったのに・・・・・・スアだけ・・・・・・」
「いいの。スンハ姉さんのはマタニティドレスだし、スンハ姉さんは私に比べるとすごく細くて着られない。スンスク兄さんがミラさんのを貸してくれると言ったけど、再婚もしないで二人の子供を育てている兄さんの奥さんの物は、とても着られそうにないわ。」
スアの部屋に掛けられている古いウエディングドレスを見ながら、ハニは部屋の荷物を片付けているスアに考え直すように言っていた。
「でも・・・・・・・」
「私ね、彼の収入やこれからの事を考えてオンマのドレスにしたのもあるけど、本当はそれが理由じゃないの。」
「違うの?」
「私もね、オンマとアッパの様にいつまでもラブラブな夫婦でいたい。沢山の子供に囲まれて、賑やかで楽しい家庭を作るのが理想なの。」
スンハがグミ二世とよくスンジョが言っていたが、スアの考えが一番グミと似ていると思えた。
「住むところも小さくて古いマンションで・・・・・・・アッパに言えば・・・・・」
「オンマったら・・・・・いつも言っていたじゃない。好きな人と一緒にいられれば、ガレージだって犬小屋だってお城に思えるって。」
スンハ以外の子供たちがまだ結婚する前からスンギがマリーと結婚する頃まで、6人の子供たち一人一人に部屋が無く、まだウンジョ夫妻とその子供が一緒に住んでいた時に、スンリが狭い家じゃなくて広くて大きな家に引っ越したいと嘆いたりしていた。
そんなスンリに冗談交じりにスンジョの横に座りながら子供たちに言った言葉だ。
「アッパと二人だけなら当然だけど、大好きなアッパの子供たちと一緒に暮らせるのなら、ガレージ位の狭い部屋でも犬小屋でもどこでも住める。狭い方が離れない様にしがみ付いていればいいから。」
そんな事を言っているハニの横で、スンジョが幸せそうな顔をして本を読んでいた。
「式場もスンギの店を借り切ってするなんて言い出すから、さすがにそれはアッパが反対してホテルを使う事になったけど・・・二人だけの手作りの結婚式もいいけど、彼が病院で看護師として仕事をしてく上に、教授と言うアッパの立場とハンダイ一族の・・・・・」
あまりにも質素に済ませようとしているスアの結婚式の事に、ハニは納得がいかなくもう少し豪華にした結婚式をしたいと、ついつい愚痴っぽく言ってしまう。
「オンマ、私はペク・スンジョとオ・ハニの娘。自分の信じた道を、どんな困難に当たってもへこたれないで進んで行くわ。」
スンジョと結婚をし、ぜいたくな生活をしていたわけではないが、欲のないスアは自分の昔を見ているようで懐かしく思える。
「ハニちゃん、メールが来たみたいだけどスングじゃないかしら?今日が合格発表でしょ?」
もう3ヶ月もスングと会っていないが、スンジョの従兄弟の智樹の家に滞在をしているから安心はしていたが。
医学部の合格発表日を忘れていたわけではなかった。
大きく息を吸い、メールを開けると大丈夫だとは判っていたがとても自分で見る勇気が無かった。
「お母さん、スア・・・・チョッと書斎に行って来ます。」
携帯を持って立ち上がると、手から携帯が消えた。
「スンジョ君!」
やはりスンジョも気になっていたのか、ハニの携帯にメールが入る音が書斎に聞こえて来た時に、リビングに出て来たのだった。
「・・・・・・・・・・・」
無言で表情を変えずに、メールを見ているスンジョの顔を見て、ハニはスングが希望の大学に受からなかったのだと思った。
「合格した。残念ながら首席合格にはなれないみたいだ・・・・・・・と書いてある。」
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