未来の光(スング) 6
フゥ― 静かなペク家の中に、ハニのため息がよく聞こえた。
寂しそうな顔で受話器を置いて、振り向こうともしないで電話台の所から動かなかった。
新聞から目を上げずに、スンジョはコーヒーをグイッと飲み干し、マグカップをテーブルの上に置いた。
「コーヒーのおかわりを・・・・・・・・」
スンジョの言葉も耳に聞こえていないのか、電話を睨むようにその場から動こうとしない。
「ハニ・・・・・・・ハニ!おい、ハニ!」
呼んでも気が付かないハニの傍に行き、肩をいつもより少し強めにポンと叩いた。
「きゃ!」
「きゃ?」
「ス・・・・・・スンジョ君・・・・・・・」
「コーヒーのおかわりと言ったけど気が付かなかったか?」
「は・・・・はい・・・・」
顔を赤くして、視線を合わせないようにしているハニのおかしな行動に、スンジョは不思議そうに見ていた。
「スングが何か言ったのか?」
「スング、いま日本は連休なんだよね・・・・・一週間・・・・の・・・」
「へぇーよくハニが知っているな。」
いつもと違って口数の少ないハニの様子がおかしい。
いつもは少しでも皮肉えば手を上げて怒って来るが、今日は何の反応もしない。
「まだ向こうの地理に慣れていないからって・・・・・・夏休みには帰るとは言っていたけど・・・・・・・」
「大学生になったんだからな。いつまでも一番下の小さな双子でもないし。」
「初めて海外の大学に行った子供だよ。スンミは結婚して海外に行ったけど、ちゃんとご飯は食べているか、お腹を出して眠っていないか、知らない人に付いて行っていないか・・・・・・・」
まるで小さな子供の初めての一人のお使いの様な言い方をしているハニに、スンジョはおかしくなってきた。 が、ハニのその顔は冗談で言っているのでも無く、真剣な顔をしていた。
「大丈夫だよ。智樹の家には何度も泊まっているし、元々スングはオレに似て寝相はいいからな。」
「そ・・・・そうだね・・・・スンジョ君・・・コーヒー・・・」
マグカップをスンジョに渡すと、ハニは洗濯物を取り入れる為に裏庭に向かって行った。
スングが日本に行ってから、スンスクも家を出ると言う話が持ち上がり、その頃からハニの様子がおかしかった。
なにかを思いつめているようで、隠し事をしてもすぐに顔に出るハニが、スンジョから見ても何を悩んでいるのか判らない。
一緒にベッドで眠らないし、どこにいるのかと探せばスアのベッドで眠っていたり、スングの部屋にいたりと、このひと月ほど様子がおかしかった。
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