未来の光(スング) 7
「おばあちゃん、また明日ね。」
「お休み。」
ミレとフィマンは、リビングで寛いでいるハニとスンジョに挨拶をして部屋に引き上げて行った。
静かな家の中で聞こえるのは、スンジョが新聞をめくる音とマグカップをテーブルに置く音だけ。
高校3年のクラスを受け持っているスンスクは、出張で今日は不在。
小学生のミレはまだ幼稚園の弟のフィマンを、スンスクがいない時は寝かしつけていた。
「オレ達も眠るか・・・・・」
「えっ・・・・」
「ハニは眠らないのか?」
何か妙に緊張をしているハニの様子がおかしい事は、もうこのひと月ずっと感じていた。
「私は・・・・えっと・・・・・・・そうだ、スアの部屋を片付けてスングのベッドのシーツを交換して・・・・・・・先にスンジョ君、眠っていて。」
壁に掛っている時計を指差しながら、大きくため息を吐いた。
「夜の9時に何もシーツ交換をしなくても、明日の朝すればいいだろう。それにスングは夏休みまで帰らないと言っていたのならそれからでもいいし、シーツ交換くらい小さな子供じゃないのだから自分でさせればいいだろう。」
「そう・そうだね・・・・スアの部屋を片付けたら、部屋に行くから・・・・・・・」
そう言って、ハニはまたスアの部屋で眠ることは判っていた。
スアが結婚して部屋が空いても、近くに住んでいるからよく二人で泊まりに来る。
そんな時は、スングの空いている部屋で朝まで眠っているハニの行動がスンジョには理解できなかった。
「なぁ・・・オレの事を嫌いになったのか?」
「まさか・・・スンジョ君以外を好きになれない事は知っているのに。」
そんな事を聞かなくてもスンジョにも判っていたが、こうも一緒に眠るのを避けられては、そう思ってもおかしくない。
「ほら、寝るぞ・・・・・」
グイッとスンジョがハニの腕をつかんで引っ張ると、その腕を振りほどこうとした。
「お前・・・・・最近おかしいぞ。何があったんだ?」
「何も・・・何もないけど・・・」
そう、スアが結婚してスングが日本に行ってから、私はスンジョ君と一緒のベッドで眠っていない。
言えない。
どうしてスンジョ君と同じベッドで眠らないのかは。
キスだってして欲しいし、スンジョ君に愛して欲しいけど・・・・・・
何も言わずに黙っていると、スンジョは少し不機嫌な顔をして寝室に入って行った。
少し強めにバタンとしまったドアの音が、ハニの胸にグサッと刺さるようだった。
0コメント