未来の光(スング) 12
コトン・・・・・ リビングのテーブルの上に熱いコーヒーの入ったマグカップを無言で置くと、スンジョはいつもより冷たい表情で一口含んだ。
「怒っているの?」
「・・・・・・・」
「ねぇ・・・・・・・」
「気になるのか?」
「何が?」
「スングの部屋に来ている女の子が。」
「うん・・・・・今までスングは、付き合っていた人もいないし、どちらかと言うと奥手で・・・・変な女の子に騙されたりしたらいけないと思って・・・・」
クスッ・・・・・・
ムッとして怒っているように見せても、昔のようにそれを維持することが難しく感じるくらい、スンジョの心は随分と素直になっていた。
それでも、相変わらずハニをからかう事は楽しくて意地悪くしたくなる。
「似て来たな・・・・・お袋に・・・・・」
「そう?そう言われると恥ずかしいけど、料理も最近は失敗もしないし、結構専業主婦も私には合っていたのかも・・・なんて思ってるの。」
最初は笑いをこらえる事が出来たが、次第にハニの発言に笑いが抑えきれなくなって来た。
肩を震わせて、新聞で顔を隠しても限界になって来た。
大きな声ではさすがにスンジョは笑わないが、クックッと抑え気味の声で笑い始めた。
「そんなに、おかしかった?」
「ぁあ、おかしいよ。」
こんな風に笑えるようになったのは、ハニのお蔭。
しかめっ面で笑うことなどなかったスンジョが、ハニと結婚をして7人の子供の父親として、長い間一緒に暮らしているうちに笑う事が普通に出来る様になって来た。
「スングも、こっちにいる時に普通に恋愛はしていたと思うよ。オレと違って我が家の息子たちは、個性的な姉や妹に免疫があったからな。」
「フゥ~ん・・・・スングの彼女誰だったのだろう。」
チラッとスンジョはスングがキエと仲良く歩いているのを見たことがあった。
その事で、交際しているかどうかは別として反対はしなかった。
キエはスングよりも10歳も年上で、分別もあるし小さい頃からよく知っている娘だったから。
「日本に行くなんて言うなよ。追いかければ逃げる・・・そう言ったのはお前だろう。うちは早婚だから、早く結婚させたいと思っているかもしれないが、スングは間違ったことはしない。自分を傷つけるような恋愛はしないから放っておくんだ。余計な事をしてそれこそスングに嫌われるようなことをしたら、オレは助けないからな。」
「判ったわ・・・・・・」
判ったと言いながら、それでもハニはスングと一緒にいる女の子が気になって仕方が無かった。
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