未来の光(スング) 13
ハニの気持ちも判らないではなかった。
1年くらい前だろうか、スングがミナの娘のキエと付き合っているようだとスンリから聞いたのは。
きっかけは何なのかをしっかりと聞いてはいないが、恋愛相談を受けた時にキエとスングが一緒に本屋にいたのを見かけた事の意味が分かったと言っていた。
「親父・・・・放っておいていいのかなぁ・・・・受験学年だし相手は結婚もしているから、早く手を打たないと良くない事になるかもしれない。」
「大丈夫だよスングは。成績も問題ないし、手を掛けて育てた子供ではないが、自分を見失ってしまう子供ではない。時期を見てそれでも続いているのなら、話してみるよ。」
大丈夫だと言ったものの、既婚者と付き合っていたスンミとは状況が違っていた。
キエはハニの親友のミナの娘で、スングとは小さい頃からよく知った相手だ。
ハニに話しをしたら大騒動になることは判っていた。
どこまで放っておいていいのか・・・・
そんな心配も無く2人が会わなくなった事を知った。
その少し前に進路の事を聞いた時に、日本の大学に行きたいと言っていた。
それが何かのきっかけになるのかは、当時は判らなかったがそれでよかったのだと思った。
スング、お前の選ぶ相手が年相応の相手で良かったよ。
上の兄妹と違ってスアとスングはいつも二人で相談し合っていたから、お父さんもお母さんも十分に愛情を注いで上げたのか自信はない。
自信はないが、オ・ハニの血を引く子供だから自分を信じて間違った方向に進むことがないと信じている。
生まれ育った土地とは違う環境で、周りに気を取られず自分が目指している夢を掴んでくることを信じているからな。
孫のミレとフィマンと楽しそうに過ごしているハニを見ると、これが人に一番必要な時間なのだと思った。
上の子供たちと違って、親元を離れて大学で勉学に励んでいる息子を心配するなとは言えないが、そのうちにスングの方からきっとハニと自分に特別な人が出来たと報告をするだろうと思った。
四季のハッキリとしている日本。
環境は自分が育った国とそれほど変わりはないが、さすがにこの梅雨と言う雨の季節は過ごしにくい。
「もう日本に来て4ヶ月か・・・・・・・」
「そうだね。」
大学の図書館で勉強をするのが、スングと優花の一つのデートコースの様なもの。 下宿先に一度だけ呼んだが、まるで自分の母に見られているような感じの琴葉の視線。
母と琴葉が仲がいい事はよく知っている。
当然の様に、優花が下宿先に来たことは伝わっている。
そこがスングは不思議に思った。
いつもの母なら、大好きな夫を放っておいても飛んでくるはずだ。
見張られている感じがしないのはそれはそれでいいが、日本の大学に来ることを喜んでくれた祖母が具合が悪くなったのではないかと気になっていた。
「優花・・・・」
「なに?」
「夏季休暇は何か用があるか?」
「お盆に、お墓参りに行くくらいで、特に・・・・・父の病院は救急指定だから、長期休暇でどこかに行くなんてことはないから。」
「オレの実家に行かないか?」
「スングの実家に?」
干渉されれば鬱陶しいが、琴葉から優花の事が伝わっているはずなのに、どんな子だとかどこで知り合ったのかと聞いてこない母の事と祖母の事が心配だった。
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