未来の光(スング) 15
日本の風習や習慣にしきたり。
勉強に必要がないわけではないが、今は覚える必要がないと思っただけ。
でもまぁ、特別な気持ちがないのに日帰りではない旅行に、同性ではない相手と二人だけで行くことが特別なのだから。
それもその男の実家に・・・・ 優花を連れて行きたい。
ただそう思っただけ。
さすがに初めての事だし、兄さんたちに電話で聞く時間もない。
最も聞けばすぐに教えてくれると思うが、それぞれ家庭の時間を大切にしているだろうから、お父さんにでも聞いてもいい。
聞いてもいいが、お父さんの傍には必ずお母さんがいる。
お母さんの耳に入れば、帰った時に大袈裟なサプライズを考えてしまうだろう。
ここは智樹おじさんに聞くしかない。
日本で生まれ育ったおじさんに聞くのが一番だ。
琴葉おばさんの耳に入らない時間を選んで聞くのは、病院から帰って来た今しかない。
智樹の書斎の前に立ち、琴葉が書斎の中から出て来るのを待った。
盗み聞きをする気持ちはないが、スングは琴葉が出て来る声が聞こえるとタイミングを見計らって書斎のドアをノックした。
__コンコン__
「おじさん・・・・・智樹おじさん・・・」
「スング君だよ、入江君。」
琴葉が智樹にスングが来たことを伝えると直ぐにドアが開いた。
「入って、スング君。すぐに飲み物を用意するわね。」
「おばさん、おじさんに聞きたいことは少しなので要らないです。」
「そうなの?日曜日の朝から勉強なんて、さすがハニさんの息子ね。」
「ありがとうございます。」
お母さんは大好きだが、今の褒め言葉は嬉しくない言葉だ。
「聞きたい事って?」
「夏の長期休暇に、優花を連れて実家に帰ろうと思っているのですけど、両親にどう言えばいいのか。」
「どうって・・・」
「おじさんはお母さんの性格は判ると思いますが、ばれると厄介で・・・・・・」
「おじさんから言って欲しいと・・・・・・」
「自分の口から言うのが常識ですが、お母さんが・・・・・」
従兄弟でもこれほど顔が似ているのかと思うほど、智樹の顔は父スンジョとよく似ていた。
父よりは小柄だが、幼い時は何度も間違えたことがあった。
「いいよ、新しい症例集が出来たから連絡をしようと思っていたから。」
本当におじさんには頼ってばかりだ。
いつかおじさんに、この恩を返せる様にしたいとは思っている。
スングは智樹に父への連絡を頼み、その足で優花の両親に会う為に家を出て行った。
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