未来の光(スング) 17
結婚をする気持はある。
それは間違いではないし、間違っていないと思う。
優花の両親が無言でいるこの空気と、何も言わないで俯いている優花の様子に、オレの勝手な思いなのかと思った。
「スング君、君もこの家に来ていたから知っているし、医療を志す人間としても一青年としても、誠実で信頼が出来る人間だと判る。」
「ありがとうございます。」
「優花からは結婚がしたい人がいるとも、真剣に交際しているとも聞いていないが、君は優花にそう言った話はしていたのか?」
無言で、まるで人形の様に俯いたままの優花。
140㎝代の小さな身体の優花の顔は、187㎝はあるスングからは見える角度ではない。
「優花?優花ちゃん?」
優花の母親が何度か、声を掛けてやっと顔を上げた。
「優花・・・あなた・・・泣いているの?」
その涙がどんな気持ちなのか、スングには判らない。
嫌いではないからいつも一緒にいてくれて、友人がまだいない入学直後から、自分に色々な事を教えてくれていると思っていた。
優花の明るくて元気で、小さな身体をピョンピョンと飛び跳ねている姿が可愛くて好きだった。
大人なキエとは違う、どこか母のハニとよく似ている笑顔に、不安な異国の大学での生活にもすぐに気持ちが楽になっていた。
「ゴメン・・・・・優花の気持ちを考えていなかった・・・今の話は無かったことにしても・・・・」
「・・・・・いの・・・・・」
「え?」
「優花、泣くほど嫌ならはっきりと断った方が、スング君の為でもある。ちゃんとこの場で、返事をして今後会わないようにしなさい。」
父親の言葉に、優花は首を振って立ち上がりスングの方を向いたと思うと、その場に両親がいる事を忘れた様に抱き付いた。
「優花?」
「嬉しいの・・・・・」
「嬉しい?」
「うん・・・・・初めて会った受験前のブックショップのあの時に、スング君に一目ぼれをしたの・・・・大学の合格旅行を韓国にしたのも、もしかしたらスング君に会えるかなと思って・・・・・・」
優花の言葉に両親は呆れたように、お互いに顔を見合わせた。
「そう・・・それならまず結婚よりも、それを前提にお付き合いをしたら?結婚はその後よ。」
「ママ・・・・」
当然だろう。
普通の親ならそう言うはずだし、それが常識だと思っているからオレは優花の両親の考えに従う事にした。
「ただな・・・・・うちは一人娘で、優花はいずれはうちの病院も継がなければいけない。君は大学を出たら帰国するのだろ?そうなると、この結婚は難しいな。」
その優花の父親の考えは間違いではない。
大学出てから数年日本の病院で研修をしたら帰国すると、スンジョと約束をしていたしそのつもりでもあった。
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