未来の光(スング) 18
優花の両親にあっさりとO・Kが出るとは思わなかったし、それよりも自分であんな風な形で言うとは信じられなかった。
「ヒエッ!」
「きゃ!」
スングの驚いた声に、優花も驚いて思わず悲鳴を上げた。
公園のベンチで座って考え事をしているスングの頬にいきなり冷たい物が当てられて、思わず大きな声を出してしまった。
「スング君の顔が赤いから暑いと思って・・・・・」
優花から冷たい缶コーヒーを受け取ると、プルタブを上げてグイッと一口飲んだ。
『とにかく今日は帰って、ゆっくりと自分の考えを纏めなさい。夏季休暇に実家に帰ってご両親と相談してからまたその事を話そう。その時に優花を連れて行ってもいいが、君の家ではなくホテルで泊まらせて欲しい。』
結婚を反対されたわけではない。
自分の国に帰るか、こっちに残って優花の家族が経営する病院で働くか。
「私ね、さっきスング君にいきなり結婚させて欲しいと言われた時、ビックリしちゃった・・・・・」
「ゴメン・・・・」
「ううん、謝らなくていいの。スングは私の事をそう思っていてくれたなんて思わなかったから。」
ちいさな両手でカフェオレの缶を持って、コクンコクンと音を立てて飲んでいる優花を見て胸がキューンとした。
「苦しいの?」
「え!・・・・どうして?」
「胸を押さえてる。」
小さな手がスングの心臓辺りを触れて、動きを測っている。
「どうしたの?段々と心臓の動きが速くなってる・・・・スング・・心臓が・・・・」
優花が顔を上げた瞬間にその唇をスングは塞いだ。
冷たくて甘くてカフェオレの味がする優花との初めてのキス。
「あっ・・・・・」
塞がれていた優花の口から小さな声が聞こえると、そのまま優花の身体が後ろに倒れ、身体の大きいスングもそのまま一緒にベンチから転がり落ちた。
「痛っ!」
「痛ぇ!」
「スング・・・・重いよ・・・・」
優花を下にして覆いかぶさる形になった二人。
手を付いて起き上がろうとした時に、誰かが傍に来て二人を指差して叫んだ。
「ママァ!大きいお兄ちゃんが、小さいお姉ちゃんをつぶした!」
ふたりが起き上がろうとした時に、その様子を見ていた子供が近くまで来ていた。
「いいの、邪魔をしちゃだめよ・・・・・」
慌てて走って来た母親は、二人の様子を誤解したのか赤い顔をして子供の手を引いて急いでその場から逃げて行った。
公園にはその親子が去った後はスングと優花の二人だけになっていた。
シンと静まり無言だったが、先に優花が笑い出した。
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