未来の光(スング) 23
優花に声を掛けられるまで気が付いていなかった。
「さっきから呼んでいたのに、ずっと赤ちゃんとお腹の大きい女の人の方を見てた・・・・・」
「気のせいだよ。もう買い物は終わったか?」
「うん、ついでにコレも買った・・・・必要になると思って。」
チラッと買い物袋の中からソレを見せて、恥ずかしそうに笑う優花に呆気にとられていたが、定員の≪いらっしゃいませ≫と言う元気な声で我に返った。
「いらないよ。返品しておいでよ。」
「だって・・・長い間向こうにいると必要になるかもと思って・・・女の子の方が用意したって・・・・」
ベソをかきそうな優花を見下ろせば、他人にどう見られているのか察しが付く。
「必要はないから。」
「赤ちゃんが欲しいの?」
「違う。まだ付き合いは許してもらったけど、その先は許してもらっていない。今まで一緒にいても何もしていないのに、オレの実家に行ったからって手は出さないし、優花が泊まる所はホテルだろ。万が一責任を取らなければいけなくなった時に、まだ優花の両親にもオレの両親にも結婚を許してもらっていないのに、無責任な事は出来ない。」
今にも泣きそうな優花と、少し怒ったような顔をしているスングをチラチラと様子を伺っている人たちがいた。
若い2人が小さな声で言い争っているような雰囲気に他人から見られては、店内に長居は出来ない。
優花に手にしている物を袋の中に収めさせると、手を引いて店の外に向かって歩き出した。
「行くぞ!」
「返品しなくていいの?」
「いいよ。夕食までに帰ろう。ご両親が夕食を用意して待っていてくれるから遅れないように帰るぞ。」
結婚の話は保留になったが、付き合いだけは許してもらっている。
その先に進むためには、優花の両親と約束したことを守らないといけない。
毎週日曜に、夕食に招待してもらっている。
6時には着席をして食べ始める。
印象をよく見てらうためには、時間をきっちりと守る優花の両親にスングが合わせないといけない。
夕食に毎週招待してもらうのは嬉しいが、品定めをされているようで緊張をして、時々現れる母のDNAの心配をしないといけないから、なおさらに緊張をする。
優花が買ったソレを返品してもいいが、人前でカウンターに出して返品手続きをしている間、恥ずかしい思いをするのは優花だ。
籠に入れて清算している時も、恥ずかしがり屋の優花がどんな顔をしてお金を支払ったのか。
小柄な優花を店員がどんな目で見ていたのか想像もつく。
薬局の袋を優花から受け取り、他の店で買った品物が入っている紙袋に入れて、時間に遅れないように優花の家に向かう電車に乗る為に駅に向かった。
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