未来の光(スング) 27
優花の泊まるホテルは大手ではあるが、その系列のビジネスホテル。
裕福な家庭の子供なのに、旅行者が使うホテルを選ばなのかったことにスングは気になっていた。
部屋はバスルームにトイレと冷蔵庫やテレビはあるが、シングルベッドが置かれているだけなのに、狭くて寛ぐことが出来るのだろうかと思う広さだった。
「もっと広い部屋を取れば良かったのに、誰がこの部屋を選んだんだ?」
「お父さんが、長期滞在するのだからここにしないさいって・・・・出張で何日も泊まる時にここを使うから教えてもらったの。」
キャリーバックを開けて、衣類をクローゼットやチェストにしまうと、まだ荷物が入っているのにまたキャリーバックを閉めた。
「全部出さないのか?まだ半分は入っていたぞ。」
立ち上がって、クルッと廻りスングに抱き付いて来た。
「何をしてるんだよ。」
ベッドしかない狭いこの部屋で、優花に抱き付かれてはスングの抑えている理性が崩れそうになる。
平気な顔をしてはいるが、この部屋に入ってから心臓の鼓動が早くなっていた。
「スングに抱いていてほしいの・・・・・すっごくね・・・心臓がドキドキして苦しくて・・・・・何もしなくていいからこうしていてほしいの。」
小さな手がスングの腰に回されると、小さな身体が小刻みに震えていた。
「優花・・・具合が悪いのか?」
首を振ると、優花の柔らかい髪がフワリとした。
「違うの、緊張していて・・・・スングのお父さんがとても素敵な方だったから、きっとお母さんもお兄さんもお姉さんたちも素敵な人たちだなって思うと・・・緊張して・・・お土産も気に入ってくれるか心配で・・・・・」
「お土産?キャリーバックにあるのが皆のお土産なのか?」
「うん・・・・」
考えてみれば、包みの数は両親と兄弟の分くらいはあった。
先月一緒に買い物に行った時は、時間を掛けて雑貨屋から衣料品の所まで回ったから、何をそんなに買うのかと気にはなっていた。
「お土産なんていらないのに。」
「だめよ!最初は肝心よ!スングだって初めてうちの家族に会った時、て土産を持って来たでしょ?お父さんにはお酒、お母さんにはシルクのスカーフでしょ・・・・お姉様とお兄様には医者と学校の先生と医者の奥様だから高級文具メーカーの高級なボールペン・・・・」
嬉しそうに話す優花に、どこにでも売っている物だろうとは言えなかった。
スングとの結婚の条件に親から出されたのは、大瀧家に来て貰わなければいけない。
初めて優花の家に行った時に、仕送りの中から精一杯の気持ちを込めた手土産を選んだのは、その為には少しでも気を使って許してもらえるようにしなければいけないと思っていたから。
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