未来の光(スング) 30
「いらっしゃいませぇ~」
マリーのよく通る声が店内に響いた。
「いらっしゃいませじゃないだろう。家族に言うにはおかしくないか?」
スングの兄のスンギの店の≪ソ・パルボクククス≫は、今日は貸し切りのため臨時休業にしていた。
ペク家が全員店内に入ると、マリーはブラインドを下ろして、ドアの外に【CLOSED】の札を掛けた。
「外人?」
亜麻色の髪のマリーを見て、優花はスングの陰に隠れてその姿を見ていた。
「クォーターさ。お母さんがハーフでお父さんは釜山人。」
「釜山人?」
「こてこての釜山の人間。」
マリーはスングの陰にいる小さな優花を見て、大きく手を広げて挨拶をした。
「スングの彼女?まぁ~!なんて小さくて可愛いの?うちのケントと同じくらいかしら?」
「ケントはスンギ兄さんの長男だよ。マリー姉さん、ケントと同じくらいって・・・・幼稚園児だよ。優花はそこまで小さくない。」
さすがの優花もスングの母からスングの半分だとか、義理の姉のマリーから幼稚園児と同じくらいとか言われると、自分が気にしている身体の小ささが気になって仕方がなかった。
大柄のスングの兄妹はみんな背が高く、スングの母と祖母が小さく見えるがそれでも身長は160㎝以上はある。
優花の身長と言えば150㎝もない。
「ねぇ優花さん・・・・」
スングの双子の妹とは歳も同じで仲良くしたいとは思っていたが、妊婦でもスタイルも良くて美人なスアが自分を見ると緊張してくる。
「は・・・はい・・・」
「スングとキスをする時はどうするの?」
スングに助けを求めたくても、机をスンギと並べていて優花の方を見ていなかった。
「え・・・えっと・・・・・・」
多少の会話は判るが、自分の思ったようにはまだ話すことが出来ない。
「せ・・・・背伸びをして・・・・・スングが少ししゃがんでくれるの・・・・・」
「で・・で・・アレはちゃんとできた?」
「アレ・・・・・って?」
「フフフ・・・一緒に来るくらいだからもう経験済みでしょ?スングと・・・・スングだって彼女がいた時期があるから・・・・」
グイッと優花は身体を引っ張られると、誰かにぶつかった感じがした。
「おい!余計なことは言うなよ!」
キエとの事は家族ではスア以外で知っている人はいない。
優花には話はしてあるが、スアにも言っていないキエとの秘密。
「なによ!ちゃんと話しておいた方がいいでしょう、前の事!」
「お前は言ったのかよ、スンさんに!」
「言ったわよ。でもキスだけしかしていないからそんなにスングみたいに怒らなかったわ。スングはそれ以上の事をしていたの?」
店の隅で双子の様子がおかしい事に気が付いたのはスンジョだった。
兄弟げんかもしないで育った双子が、兄妹が集まった場所でそこに家族以外の人もいる所で険悪な空気が流れた。
「スング、スアは妊婦だ。怒らせないように・・・・・それにお前が怒っては優花さんが困るだろう。」
スアをハニの傍に行くように言うと、スングと優花を主役の場所に座らせた。
「お父さん・・・・・みんなに言う前に相談ですが・・・・・・・」
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