未来の光(スング) 33
明日の早朝にオペがあるからとスンジョとハニが帰ると、≪ソ・パルボクククス≫の店内は兄妹たちが久しぶりに会ったことで、みんなの酒の量が増えていた。
スングも兄たちに勧められて飲んではいるが、まだ未成年だからと言って一応断っていた。
「優花・・・気にするな。」
「うん・・・・大丈夫だよ。スングのお母さんだもん。」
泣きたいのだろう。 目に涙が浮かんでいるが、必死に堪えている優花をここに誰もいなかったら抱きしめて離したくない気持だった。
「汚れた食器を片づけるね・・・・・向こうに持って行けばいいの?」
「いいよ、そのままで・・・うちはみんな酔っていても片づけはちゃんとやるから。」
「ううん・・・やらせて・・・・」
やらなくてもいいと言っても、母にあんな風に言われたら居心地が悪いだろう。
食器を纏めて、厨房奥にある洗い場に運ぶ優花の後姿を、スングは黙って見守っていた。
洗い場で、スアと一緒に洗い物をしていたグミが、優花が食器を持って来たのに気が付いて振り向いた。
「お客様なのに・・座っていてよかったのよ。」
「いえ・・・片付けるのは好きなので。」
年老いても綺麗なグミと、背の高いスアに少し気後れしている優花は、顔を上げる事が出来なかった。
「ハニちゃんね・・・スングの母だけど・・・あんな風になったのは初めてなの。人を悪く言ったり暴言を吐く事をしない人だけど、優花さんを嫌いではないのよ。」
「私もオンマがあんな風に言うのを初めて見たのよ。」
「大丈夫です、気にしていないですから。」
3人が並んで食器洗っている音よりも、気持ち良さそうに酔っているスングの兄妹たちの笑い声が大きく響いた 。
「ハニちゃんが、あんな風に言うのはね、スングが一番父親に似ているからなの。ハニちゃんはスンジョただ一筋で、その子供のスングが顔も仕草もそっくりで・・・・性格はね・・・スンジョはいい方ではないけど、その性格の・・そうね・・・・80%は受け継いでいるわね。ちゃんと優花さんとスングの結婚を許してくれるから待っていてね。きっと家に二人で帰ったからその話をすると思うの。」
ポトンポトンと落としていた涙は、止まる事が出来ないほど流れていた。
スングにしても優花の両親から無条件で結婚について許してもらったわけではない。
自分もそう簡単に許してもらえるとは思っていなかったが、ハニの話を聞いてスングとの結婚に自信が無くなっていた。
「いつまでこっちに居るの?私は、今日家に帰るから実家の部屋を使ってもいいわよ。スングの隣の部屋だから、一緒にいる時間も長いし、何ならスングの部屋で一緒に眠ってもいいわよ。」
「そ・・・そんな・・・・ホテルを取っているので・・・父から、そうするように言われているので・・・・・二週間後には私が先に帰ります。」
グミのアンテナからスアのアンテナにテレパシーが飛んだのか、二人は顔を見合わせて頷くと、同じ年のスアがニッコリと笑った。
「優花さん、必殺の結婚作戦があるの。」
「必殺の?結婚作戦?」
「そう・・・・あのね・・・・・」
スングの座っている場所から見える優花は、グミとスアの間に立って食器を洗っている姿だった。
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