未来の光(スング) 35
「さぁ、オレ達は帰るか・・・・・スンギ、ご馳走様・・マリー今度はうちに来てくれよ。」
「スンリ義兄さん・・・お義父さんがいない時に行きますね!」
ほろ酔いのスンリはマリーに挨拶をすると、スングの横にいる小さな優花の所に来た。
「祖母から聞いたけど・・・・ホテルに部屋を取っているんだって?」
「え・・・はい・・・」
「スンリのデカい身体でも眠れるベッドの部屋に代えてもらえよ。」
「スンリ兄さん!」
「どうせ結婚するんだし、向こうに行くのなら婚前旅行でいい思い出を二人で作れよ。オレだって済州島にソラと行った時に思い出を作ったぞ。」
他から見ればスンリはスンギの若い父親くらいの年齢だ。
兄弟が仲がいいのはペク家の特徴だ。
「よく言うわ。その前から、ソラと外泊していたのを知っているわよ。」
「うるさい!姉貴にそれを言われる筋合いはないよ。親父に結婚を許してもらうために計画的に妊娠したくせに。」
喧嘩の様で喧嘩ではないスンハとスンリの会話に、優花はただ驚いた顔で見ていた。
「スング、優花さんをホテルまで送るよ。」
穏やかな顔のスンスクは、ミレとフィマンの手を引いて、二人の方に歩いて来た。 スンスクはふたりの子供を連れているからではなく、普段から酒を飲まない。
「ありがとうスンスク兄さん。優花と少し話があるから、オレも一緒に行きます。」
スンスク兄さんは凄いよ。 高校生の時にミラさんと結婚を決めて、今のオレの年齢の時にはミラさんはかなりよくない状況だった。
亡くなっても再婚もしないで一人で子供二人を育てて・・・・・・
スンスク兄さんのその強さは、お父さんと似ていますね。
「スング・・・・」
「あの車だよ。」
後部座席に、ミレとフィマンと並んで座っても違和感のない小さな優花。
母親を知らないフィマンは、少し照れたように優花の横に座っていた。
「お姉ちゃん・・・・スングお兄ちゃんのお嫁さんになるの?」
「お・・・・お嫁さん・・・・・なれるかな?」
「なれるよ。なったら僕と一緒に遊んでくれる?」
「え・・・・・・」
フィマンの願いに困っていると、スングは助手席から振り向いた。
「フィマンは母親を知らないんだよ。ほとんど意識のない時に産まれて、そのまま亡くなったから。」
「そうなんだ・・・・病気だったの?」
ミラの死を受け入れる事が中々出来なかったスンスクも、少しずつ人にミラの事を聞かれても笑顔で答えられるようになって来た。
「出逢って直ぐに発病したんですよ。妻の夢を少しでも叶えてあげたくて、無理をし過ぎてしまったけど、いつも子供と私の傍に妻がいると信じています。」
どんな病気だったのかと聞く事は出来ない。
スングからも大体の話は聞いていたが、高校生の頃にスングの兄はミラの全てを受け止めて結婚を決意した素晴らしい人だ。
再婚の話も断り、命を懸けて産んだ二人の子供と静かに暮らしている。
とても出来る事ではない。
そんな素敵な兄妹がいるスングと一緒にいられる自分がとても幸せだと思っていた。
「兄さん、30分ほど何処かで待っていてくれる?時間になったらホテルの前で待っているから。」
優花の泊まるホテルの前に停まると、スンスクにそう言って優花とスングは車から降りた。
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