未来の光(スング) 36

スンスクの車の窓から、ミレとフィマンがホテルの前の二人に手を振る。

 今は泣きたいほどの気持ちの優花が、笑顔で手を振る子供に笑顔で応えていた。 


「部屋に行くぞ。」 知らない間にフロントから預けていた鍵を受け取ったスングが後ろに立っていた。 

4人乗りくらいに感じるエレベータの中にふたりっきりになると、急に優花はしゃがみ込んで泣きだした。 

「大丈夫じゃないよな・・・オレも女だったら泣きたいよ。よくお前があの場で泣かないなと感心したよ。」


チンッ!と鳴って優花が泊まる部屋の階で、エレベータのドアが開いた。 

「歩けるか?」 

コクンと頷くと、フラフラと静かに歩き出した。

 静かな廊下に聞こえるのは、優花が鼻をすする音だけ。 

カードキーをタッチパネルに当てると、ピッ!と音が響く。

 繁盛記でも、観光客は小さなビジネスホテルにはほとんど泊まらない。

 優花には調度良い広さのホテルでもスングが入ると狭い。 


「スンギ兄さんが作った食事・・・・・冷蔵庫に入れておくぞ。」 

「スングがタッパに詰めてくれたの?」

 「兄さんが・・・・・ホテルの名前を聞いてきたから、ここに泊まっていると言ったら持たせてくれたよ。2~3日は冷蔵庫に入れておけば大丈夫だってさ。昼と夜はオレが美味しい店に連れて行ってやるから。」

 本当はそんな話をしたいわけじゃない。 

優花の父に長い2人での旅行を許してもらったのも、スングの両親に簡単に許してもらえないだろうと思っていたから。 

椅子もない狭い部屋のベッドに、身体が付くほど近づいて並んで腰かけていると妙な気持ちになる。 

特別に意識はしていないが、お互い何も話さないでいた。 


「スング・・・・あの・・・・・今日は・・・・なの・・・」

 「ん?何が?今日なんだ?」

 「今日・・・すると・・・赤ちゃん・・・・」

 優花はグミとスアと一緒に食器を洗いながら強行突破の話を持ちかけられた。

 ペク家にはこれで結婚を許可してもらった子供がいると。 

「スアとおばあちゃんに何を聞かされたんだ?」 

「何をって・・・・・」 

「結婚を許可してもらうために、先に子供だけ作れとでも言われたんだろ?」 

「どうして・・・・・」

 「判るさ・・・スアはオレと双子でいつも一緒にいたから、考えていることくらい分かるし、おばあちゃんがその話をスンハ姉さんに言って実行したからな。」

 期待するわけではないが、優花は緊張してゴクンと唾を飲みこんだ。 


「オレは何もしないよ。優花はどうせあの時に買った例の物も持って来ているだろうが、オレはたとえお母さんとお父さんに許してもらっても責任が取れない事はしない。」

 本心では、その手で行ってもいい気もしたが、まだ大学1年。

 医学部を卒業してもまだ研修医として仕事をしてからではないと、一人前とは言えない。 

「結婚をしないわけではないから、その時が来たら子供の事を考えればいい。優花とオレは結婚よりもまだやらないといけないことがあるから、急いで親になる必要もない。オレはスンハ姉さんの様に、強行突破をして結婚をしたいとも思わないし優花の両親とオレの両親にちゃんと許してもらってからしか優花の身体にも触れない。」

 残念そうにしている優花の顔を見て、スングはクスッと笑って長い髪をなぜた。

 「今夜は疲れているからゆっくり体を休めろ。明日、オレの母校に連れて行ってやるから。」 

きっちりと30分、優花の部屋で過ごしたスングはホテルの前で待っている兄の車に乗るために部屋を出て行った。 



ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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