未来の光(スング) 37
「スンスクとスングが帰って来たみたい・・・・・」
ガレージの方から聞こえるスングとスンスクの足音と、ミレとフィマンの話し声。
最初に自分がスングと話をするから、呼ぶまで書斎には来ない様にとスンジョに言われていたが、初めて取った自分の態度に、スングに謝らないといけないと思っていた。
「おばあちゃん、ただいまぁ~。アッパにね、おじちゃんの会社の新しいゲームを買ってもらったよ。」
デパートの袋を上に掲げて嬉しそうにしているフィマンとミレは、そのまま自分たちの部屋に入って行った。
「スンスク、何も買わなくてもウンジョおじさんに言えば貰えたのに。」
「フィマンが友達みたいに並んで買いたいと言ったから・・・・それに、評判も聞けるしね。じゃ・・・明日は朝早くに学校に行かないといけないから、このまま風呂に入って寝ます。お休みなさい。」
「ああ・・・・お休み。」
ミラと結婚した時に改装した部屋で、親子3人で生活をしている。
客間を改装して作った部屋で、いくらバストイレが付いていても、狭くて生活もしにくいのに、この家でずっと両親と二人の子供と暮らしたいと言ってくれたスンスク。
7人の子供の中で、恐らくスンスクが一番ハニの心に近い子供だろう。
「スング、今日帰国して疲れていると思うが、ちょっと書斎で話をしないか?」
「はい・・・・」
ふたりに背を向ける様にしてハニはキッチンに向かった。
スンジョとスングがどんな話をするのか気になって、ドアに耳を当てて聞きたいが、聞いてしまって後悔する事もあるし、聞いてよかったと思う事もある。
パニックになりがちな自分に、スンジョがスングから聞いた事を自分に話してくれることは判っているから、呼ばれるまでここでシンクを洗っていようと思った。
この部屋は好きだ。
お父さんの所蔵している本はとても興味深い物ばかりで、大学の図書館や公立の図書館よりも好きだ。
「あとからお母さんに飲み物を持って来て貰うから、スングの心の中の事を全部言ってみなさい。」
「心の中の事?」
「あぁ・・・お前が前に付き合っていた人・・・キエちゃんだろ?お母さんの親友のミナおばさんの娘の。」
「お父さん・・・・・」
「知っていたよ。でもお前は、両親を困らせたりしない子だと判っていたから、知った時もそのまま知らないふりをしようと思っていた・・・・・・・・どんな付き合いをしていたんだ?」
「どんな付き合い・・・・・」
どんな付き合いをしていたのかは、本当の事は優花にしか言っていない。
スアもキエと付き合っていた事は知っているが、ただ一緒にいるだけだと思っている。
事実を言ったら父に叱られることは判ってはいるが、言わないで誤魔化すことは出来ない。
「・・・・・・不倫・・・です・・・・」
「・・・・・・・・・」
何も言わない父が怖くて、上目づかいで見ると、目頭を押さえてじっとしていた。
その父の頬に涙が一滴流れていた。
「お父さん・・・・・」
「お父さんが、お前が何か悩んでいるのは知っていたが、お前なら乗り越えられると思って話を聞いてあげる事が無かったからな・・・・・・・今のこの事はお母さんには絶対に言うんじゃないぞ。それと優花さんにも。」
「優花には話しました。それでも今はキエさんとは終わっているから、オレとの結婚を受け入れてくれました。」
「そうか・・・・・じゃあ、お母さんにお茶を持って来て貰うから、ここからは優花さんとの結婚の話だ。」
スンジョはそう言うと、立ち上がってキッチンにいるハニにお茶を持ってくるように声を掛けていた。
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