未来の光(スング) 38
コーヒーではなく、珍しくお茶が書斎のミニテーブルの上に並べられた。
スンジョがコーヒーを飲まないでお茶にする時は、真剣な話をする時だ。
もっとも、スンジョがハニの様に恍けたり笑わせるような言葉は言ったことは無いが、両親が話し合って決めた結論をスングに伝えるのだろうと思った。
人々もうらやむ両親の仲の良さ。 並んで座れば、実の子供でも両親の間に割り込む勇気が湧きそうにもならない。
兄さんや姉さんたちは、この両親の様な夫婦が理想だけど、とても真似が出来ないとよく言っていた。
一緒に暮らし始めた時の話は聞いた事はあったが、二人はどういう切っ掛けで付き合い始めて結婚に至ったのかは、スアとオレだけは知らないし、聞かない方がいいと思う。
「スング・・・・結論だ。」
「はい・・・・」
何の結論なのか、言わなくても判っていると言う事だろう。
「大学を出てから研修も終わり独り立ちで来るまでは、結婚はしないと約束をして欲しい。」 「お父さん・・・・・・・」
反対していたハニの顔をスングはチラッと見たが、母は父の意見には従うから結婚を許してくれるために、短い時間に両親が話し合ってくれたことを思った。
「おばあちゃんの寿命は短いかもしれないし、スングが一人前の医師になるまで元気かは判らない。あのファン・グミの事だ、お前をすぐにでも結婚させようとすると思うが、どんな事を言われてもてられても、お父さんが許すことにしたことは守って欲しい。」
良かった。
お母さんがあんな風に反対をした時は、おばあちゃんとスアが優花に言った事をしてでも結婚をしようと思っていた。
それは優花の両親も裏切ることになるし、海外の大学で医療を学ぶことを許してくれた両親も裏切ってしまう事だ。
「あのね、スング・・・・・」
「はい。」
なにか恥ずかしいのか、ハニは顔を赤くして言いにくそうにしている。
「ゴメンね・・・お母さん、スングを他の女の子に取られると思ったら・・・・・」
世間でよく言われている言葉を、夫一筋で子供よりも夫しか見ていない母のその言葉は、息子である自分を可愛くて仕方がなくてつい言ってしまった事だと伝わって来る。
「分かっていますから・・・・・いきなり女の子を連れて来て、その事結婚をしたいと言ったのですから。」
「本当に?許してくれるの?」
何も悪い事をしたわけではない母なのに、スングが頷いただけで嬉しそうに子供みたいな笑顔をした。
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