未来の光(スング) 44
バスルームから着替えて出て来た優花は、チェストの上に昨日スングの兄のスンギが用意してくれた食事が並んでいるのに気が付いた。
「そんなに食べられないよ・・・・」
「大丈夫だ。オレも寝すぎて朝食抜きだから、一緒に食べようと思っているから。飲み物は買って来たジュースでいいだろ?」
「うん!・・・わぁー!近くで見ると、美味しそうで、なんだか食べられそう・・・スングのお兄さんはお母さんに似たの?」
紙のコップに、ジュースを入れているスングはチラッと優花を見て聞き返した。
「顔か?」
「顔も似ていたけど、料理が上手だからそうかなって思って。」
椅子代わりにベッドに腰掛けて、並べられた食事を眺めている優花に、紙コップに入れたジュースを渡した。
「お前と昨日話していて忘れたのか?」
「昨日?甘い玉子焼きと・・・生煮えの・・・」
思い出した優花は、恥ずかしそうに手で口元を隠した。
「お母さんは料理は出来ないんだ。作っていても、人前に出せるものは一度も出来たことは無い。スンギ兄さんはじいちゃんに似たんだ。」
「おじいちゃん?」
「もう亡くなったけど・・・あの店はおじいちゃんから受け継いだ。元々は、お母さんのおばあさんが開いた店だけど、母方のおばあちゃんとお袋は料理は出来ない。」
「でも、スングの兄妹ってみんな背が高いよね。美味しい物を食べたから大きくなったんでしょ?」
「お前のお母さんも料理が美味かったけど、お前は小さいよな・・・・」
「確かに・・・・」
優花の両親の背は低くないが、どういうわけなのか優花の背は中学生の時に止まったきりみたいに小柄だ。
「ほら、沢山食べろよ。デカくなるかもしれないからな・・・・」
「デカくって・・・・どこ見ているのよ!背は低くても胸は大きいんだから!」
ぷうっと膨れて胸を張ってスングに見せつけようとして来た。
思わずさっき捲れ上がったパジャマから見えた胸を谷間を思い出した。
背は低いのに、思った以上に大きかった胸が一瞬丸見えになった。
「あーっ!エッチな事を考えてる!」
「考えていないよ。ほらサッサと食べろ・・・・・・・それから、チェックアウトの準備をしろよ。」
「チェックアウト?まだ1泊しか泊まっていないのに、日本に私だけ帰すの?」
グッとジュースを飲み干すと、空いた紙コップを潰してゴミ箱に入れた。
「お母さんがオレん家に泊まれる様に、夜中にシーツ交換をしていた。」
「スングと同じ部屋?」
「バーカ、スアの部屋だよ。いくら安いホテルでも、長期間宿泊していたらかなりの金額になるだろう。オレもここまで毎日通うのも面倒だし、お前も一人で泊まっているのも寂しいだろ?」
「お母さんに、相談しないと・・・・」
優花は、カバンの中なら携帯を出して母に電話を掛けた。
開いたカバンの中に見えるあの巾着。
絶対に優花には触れないと誓ったが、本心は優花に触れたくて仕方が無かった。
「お母さんがね、迷惑を掛けないようにしなさいって・・・・スング?」
「・・・・・・・優花・・ソレ・・・・・使うか?」
「ソレ・・・・って・・・・」
巾着の方に顎をクイッと指した。
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