未来の光(スング) 47
数日前までは、一人娘が増えた様に明るい笑い声が聞こえていた。
ハニとは似ていない将来の嫁は、遠くなったハニとグミの出会いの場面とは正反対だった。
キッチンに並んで立っている二人の後ろ姿は、もう40年以上前のお袋とハニの姿と重なっていた。
カチャリとウッドテラスのドアが開いて、グミが食べ終えた食器をハニが持って姿を現した。
「お母さんも寂しがっていたわ。優花さんは私の若い頃とどこか似ていて、スングはいい彼女を見つけたって。」
「そうだな。」
お袋がそう思のなら、スングは向こうの家に入っても幸せになるだろう。
一番最後に結婚することになるスングは、自分たちの近くではなく遠く離れた日本で生活をする。
子供は親元から離れて、新しく家族を持つのは当たり前のことだけれど、自分も淋しい気持ちが無いわけではない。
「はい、お母さんのバイタルよ。」
どこが悪いわけでもないけれど、高齢になったグミの体調チェックをするのは医師と看護師としてではなく、息子と嫁の仕事としている。
「お母さんも一時具合が悪い時もあったけど、最近は安定しているわね。」
「そうだな・・・・」
オレ達の親もお袋だけになってしまったけど、オレ達もいつかは子供を置いて逝かなければいけない。
少しずつその時が近いのは、ハニの様子を見ていて判る。
「最近健康診断はしていないだろう。」
「面倒だし、うちには名医がいるから。」
「オレもしていないし、一緒に健康診断をしようか?」
「えー、いいよ。どこも悪くないし、何でも食べられるし。」
判っているよ。
お前は看護師をしているけど、病気が怖くて健康診断をしない事を。
オレは、家族の為にお前には内緒でしているけど、お前は仕事を辞めてからはしていないから。
一番健康診断をしない理由は、母親を小さい時に亡くした記憶が有るから、自分も同じ病気で亡くなるのではないかと言う不安だろう。
本当はその為に健康診断をしなければいけないのだから・・・・・・・
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