未来の光(スング) 50
40年以上変わらずに見ている夕方のリビングの光景。
ハニとグミが、家族の洗濯物を話をしながら畳んでいる姿は、姑と嫁と言うよりも実の母娘と知らない人はそう思うだろう。 それほどこの二人の仲の良さは自然に見える。
「随分と洗濯物も少なくなったわね。一時は永遠に畳まなきゃいけないくらいの量があったわよね。」
「すみません・・・・子供を沢山生んで・・・・・」
「いいのよ・・・・・孫たちはみんな良い子で・・・・・明るくて元気で優しくて。ハニちゃんと本当によく似ていて・・・・私の目に狂いは無かったわ。スンジョとハニちゃんが結婚をして、笑いが絶えない日ばかりで本当に楽しかったわ。無愛想で人を見下していたスンジョが、愛する人と幸せに暮らすことが出来て本当に良かったわ。」
きっちりと畳まれた洗濯物を、スンジョ・スンスク・ミレ・フィマンと分けて、それぞれの場所に片付けて、後は夕食の準備に取り掛かれば、1日の家事の殆どが終わる。
「お母さん、コーヒーを淹れましたよ。それとお母さんの好きなケーキもあるので食べませんか?」
グミをリビングからダイニングに連れて来ると、テーブルにコーヒーとケーキが3っつずつ。
「いい香りね・・・・・甘い物が嫌いだったスンジョが、ケーキを食べるようになったなんて随分と変わったわね。」
「ここのは、甘過ぎないですから・・・・どうぞ・・・」
ハニが淹れたコーヒーを一口飲むと、幸せそうな顔をしてハニを見た。
「いつも変わらないハニちゃんの淹れたコーヒー・・・・本当に美味しいわ。」
「ありがとうございます。」
「ハニちゃんがね、お産で入院している時に・・・誰の時だったかしら・・・・スンギの時だったか・・違うわねスンリの時だわ、私がコーヒーを淹れたの。そうしたらコーヒーが変わったかって・・・・一度も変えた事が無いのに、ハニちゃんのコーヒーが飲みたかったみたいだったわ。」
「スンジョ君が、私が淹れたコーヒーは誰にも負けないって。」
スンジョに持って行くコーヒーをトレイに乗せながら、グミの言った言葉に笑顔で返していた。
「ゴメンなさい、スンジョのコーヒーが冷めてしまうわね。持って行ってあげて。」
ケーキを食べて、またコーヒーをグミは飲んだ。
大学も病院も辞めると決めたスンジョは、朝から書斎に籠り引継ぎ用の資料を纏めたり、後輩医師や他の医師の為に伝えたい事をマニュアル化すると言っていた。
人の何倍もの勉強をして、いつも新しい事に挑戦をしていたスンジョのその姿を見ていることがハニは好きだった。
____ コンコン・・・・・
「スンジョ君、休憩をしてね・・コーヒーとケー・・・・・スンジョ君!」
額に手を当てて辛そうにしているスンジョの姿に、ハニは驚いて何が起きているのか分からなかった。
「スンジョ君!・・・大丈夫?」
「・・・・・ドアを閉めて・・・・・静かに・・・・・」
ダイニングにいるグミに聞こえないようにしたいのだろう。
ハニは急いで、ドアを閉めてスンジョの傍に駆け寄った。
「救急車を呼んだ方が・・・・・・」
「大丈夫・・・・・カバンの中に・・・名刺大の箱が・・・・」
思ってもいないスンジョの姿にハニは涙が出そうだったが、スンジョの為に言うとおりに動くことしか出来ない。
カバンの中から、箱を取り出して蓋を開けた。
「スンジョ君・・・この薬・・・・・」
「大丈夫だ・・心配ない・・・・誰にも言うんじゃない。」
震える手でハニは薬を1錠スンジョの口の中に入れた。
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