未来の光(スング) 51
額に浮かぶ汗をハンカチで拭きながら、ハニの目から流れる涙が止まらなかった。
「バ・・・・カ・・・どうしてお前が泣くんだよ。」
「だって・・・だって・・・最期は一緒って・・・・・約束したのに。」
「オレを・・・殺す気か・・・少し静かにしてくれ・・・・・」
書斎の中に聞こえるハニの鼻をすする音と、スンジョの口から洩れる僅かなうめき声。
発作が静まるまで数分が何時間もかかっているように感じる。
「フゥー・・・・もう大丈夫だ。」
「いつから?いつから悪かったの?」
「2年前かな・・・」
「その頃って・・出張が多かった時・・・」
「親父の血を引いたよ。大学の人間も病院の人間も誰も知らない。絶対に言うんじゃないぞ。オレはお前を置いて死なないから、だからハニもオレを一人にさせるなよ。」
新しい命の誕生があれば、消えて行く命もある。
スンジョにはまだやり残したことがあるから、このまま時が経つのを待っている気持もない。
「来月、智樹の病院に行くけど、ハニも付いて行くか?」
「智樹さんの病院?」
「あぁ・・・・・この間、優花さんとスングの事で日本に行った時、オレが一人で会合があるからと出かけただろう。」
「うん・・」
確かあの時の私は、琴葉さんと一緒にデパートにお買い物に行った日だ。
「その時に診てもらったんだよ。簡単な手術で数日で普通の生活に戻れる。だから誰にも気づかれることも無いし、ハニを不安にはさせないから。」
独りぼっちは嫌。
まだ小さい時にママが亡くなって、おばあちゃんがまだ生きていた時は寂しくなかったけど、おばあちゃんも亡くなって夜遅い時間まで仕事から帰ってくるパパが帰って来るのをどんな気持ちで待っていたのか。
今はそのパパももう亡くなり、この広い家の中に独りで誰かが来るのを待つのなんて耐えられない。
お母さんはまだそれなりに大病も患わないでお元気でも、頼りにしているスンジョ君に何かあったら、きっとお母さんもショックをだと思う。
少し前までの悪い顔色から血の気が戻って、覚めたコーヒーを飲んでいるスンジョ君の顔を見て、どうして2年間も私に知られないようにしていたのかと聞きたくなって来た。
私がしっかりしないと・・・・
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