未来の光(スング) 54
大きなお腹を抱えて、スアは実家の階段を上がっていた。
まだどことなく幼さの残るその顔は、スンジョにも似ているようでありハニにも似ているようでもあった。
「ただいま・・・・・あぁ~しんどかった!」
スンジョとハニが日本に出発をすると言うその日に、韓国にいる二人の子供たちがペク家に集まっていた。
「スアまで来たの・・・お腹が大きいのだから来なくても良かったのに。」
「だってぇ・・・・お姉さんやお兄さんたちが実家に来るって聞いたから・・・」
ここにいるペク家の中で、スンジョの事を知っているのは、ウンジョとその妻のミアだけ。
ハニもスンジョも、もうすぐ子供が生まれるスアが、両親がいない間に何かあったらと不安がってしまわないかと気になっていた。
「検診の結果はスンハから聞いたけど、順調そうだな。」
「うん、予定日通りになりそうだって・・・・そんな時期なのに、どこまでラブラブな両親なのかと呆れているわ。自分の娘の出産よりも、定年記念の二人っきりの旅行だなんて・・・・」
ハニは心の中で謝っていた。
ごめんね、初めてのお産が近いのに付いていてあげられなくて。
スアの出産予定日には帰国できる予定だから。
「スンジョ、ハニちゃん・・・新婚旅行のし直しだなんて・・・・何かあったの?」
「何かって?」
グミの何かを疑うようなその言い方に、さすがのスンジョもドキリとした。
「スンジョが浮気をして、ハニちゃんを泣かせたとか・・・・」
「あるわけないだろう・・・・・」
「そう?ちゃんとハニちゃんと仲良くしているの?」
「してるよ。」
ニヤニヤと笑ってスンジョとハニを見ている子供たちとウンジョ夫妻。
スンジョが浮気をすることは、絶対にありえないと誰もが思っている。
「仲良くしているのなら、スアとスングに姉妹でも出来るのかしら?」
「お・・・・・お母さん・・・・私にはもう出来ませんよ・・・」
「あら!ハニちゃんは看護師でも、知らないのかしら?生理が止まっても排卵はあるのよ。スンジョだって男性機能がちゃんとしていれば出来るはずよ。それとも、スンジョの男性機能はもう使えないのかしら?」
この年齢になってもまだグミがこんな事を平然と言えることが、スンジョとハニやウンジョ夫妻に孫たちは、この人には誰も叶わないと思わせる事の一つだろう。
「もう、無理ですよ。スングとスアを生んだ時も、双子だから大変だったのとは違って、孫がいるのにこれ以上は・・・・・・・」
グミの冗談にもこんな風にそのままに受け止めるハニは、子供たちにとってこの母の子供で良かったと思える。
加齢を重ねても純粋な心を持っている母と、その母を愛している父と永遠に幸せであって欲しいとどの子供たちも思っていた。
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