未来の光(スング) 58
何かあったのですかと聞きたいけれど、怖くて聞く事が出来ない。
スンジョ君の術後の管理の為に、病室内は模様替えがされていた。
「あの・・・・・」
「終わりましたよ。予定よりも早く、順調に進み成功です。」
成功と言う言葉だけで、涙が出て来た。
智樹さんの事を信じてはいたけど・・・智樹さんは自分の腕はスンジョ君の次の腕だと言っていたから。
「入江先生の腕は世界一と言っても過言ではないですから。」
「世界一?」
「そうですよ。私達看護師は、手術を受けた患者さんにそう言っています。」
こんな事を言っていいのだろうか。
スンジョ君の方が世界一だって・・・・・・
そんな事を思っていたら、スンジョ君が運ばれてくる音が聞こえて来た。
バタンと開いたドアから、ストレッチャーに乗ったスンジョが運ばれて来た。
初めて見るスンジョの青い顔。
それを見て、ハニの足はガクガクと震え涙が出そうになって来る。
看護師が麻酔の効いているスンジョの名前を呼んで声掛けをしている。
僅かに動くスンジョの口。
泣いてはいけないと思っても、ハニは涙が流れそうになって来た。
「おい、スンジョ!お前の最愛の妻を泣かせてもいいのか?」
智樹が手術着のまま入って来ると、医師としてではなく仲の良い従弟としての言葉を掛けた。
その言葉にスンジョは反応をして、口元が少し動いた。
「智樹さん・・・・・」
「ハニさん、コイツはこんな時も完璧な男だったよ。お蔭で、オレもやりやすかったよ。多分聞こえていると思うけど、譫言(うわごと)を言っていたよ。」
「譫言(うわごと)?」
「ハニィ~、オレの傍にいてくれ~絶対に離れるなよぉ~・・・・ってね。」
さすがのハニも、それは冗談だと思っていた。
気の知れた相手だから智樹が言ってくれたことだとも判っている。
「ハニさんは、スンジョの目が覚めるまで声を掛けてやってくれればいいから・・・・たぶん大丈夫だから、もし何かあったら呼べばすぐに来るから。」
智樹が病室を出て行き、看護師も時々様子を見に来るからと言って出て行くと、スンジョと二人きりになった。
点滴輸液が流れている方の手を握ると、少しだけ握り返してくれた。
ハニはスンジョと約束したことを思い出した。
「スンジョ君、お帰りなさい。」
ほんの僅かにまたスンジョの唇が動いた。
ただいま・・・
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