未来の光(スング) 59
スンジョ君の寝顔見慣れているけれど、まさかこんな風に手術が終わって眠っている姿を見るとは思わなかった。
「目を覚まして・・・・」
麻酔が切れれば、目を覚ましてくれる。
そうは思っていても、こんな風に目を閉じているスンジョ君を見ると、不安で仕方がない。
「ん・・・・・・・」
「スンジョ君?判る?」
ひとつふたつと瞬きをして、スンジョは静かに瞼を開けた。
「気が付いた?」
「あぁ・・・・」
「よかった・・・・智樹さんを呼ぶね。」
ハニがコールボタンを押そうと手を伸ばした時に、スンジョはハニの腕を掴んだ。
「ハニ、ありがとう。」
「どうしたの?」
「約束を覚えてくれて・・・お帰りなさい、と言うハニの声は聞こえたよ。」
「私も判ったよ・・・ただいまとスンジョ君が言ってくれようとしたこと。」
昔の自分たちを想うと、こんな風に心で通じるような関係になるとは思わなかった。
いつも失敗だらけで、何度スンジョと喧嘩をしたか。
その度に自信を無くしていたハニも、母として子供を育てて行くうちに、スンジョの為ではなく自分の為に頑張ろうとして来た。
目の前で従兄弟の智樹に傷口の状況を見てもらっているスンジョと、こんなに幸せにいられることが今でも夢のような気分だ。
「ハニさん、出来るだけジャッキを上げて身体を起こしてください。こいつの痛みに耐えている顔を見て、今まで泣かせてきたことのツケが廻ったとほくそ笑んでください。」
智樹の顔はスンジョとよく似ているが、性格も口の効き方もスンジョとは正反対。
そんな従兄弟でも、スンジョは同じ医師として信頼をしている。
だから、誰にも知られないで異国で手術を受けることを決めた。
「そうですね・・・スンジョ君が痛いと言う顔をしたらこう言います。その何十倍も心を傷つけたのだから、今償って・・・・・って。」
スンジョはハニがそう言うとは思いもよらなかったのか、驚いて何も言えないと言う顔をしていた。
智樹はニヤッと笑うと、ハニもやっとスンジョの手術が終わって気が楽になったのか、いつもの笑顔をスンジョに見せた。
残りの人生、ハニの笑顔をずっと見て過ごして行けると言う事に、無事に手術が終わって生きていられることの幸せを噛み締めた。
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