未来の光(スング) 64
たったひと月だけ契約しても我が家だ。
この部屋で、ハニはオレが入院をしている時に独りで守ってくれた我が家。
「はい、同じ物ではないけど・・・・・・」
ちいさな折り畳みの机の上に静かにマグカップを置くと、スンジョはそれをすぐに持ち上げた。
「いい香りだ・・・・」
一口飲むと、目を閉じてホッとした表情をした。
「美味しくない?」
「美味しいよ・・・病院にいる時は飲めなかったからな。」
二口目を飲むとまたスンジョは目を閉じて、ニッコリと笑顔を見せた。
「布団を敷こうか?退院しても無理はいけないから。」
「いや・・・いいよ。もう少ししたら、スングに電話を入れたいから。」
スングと優花に、形だけの結婚式をグミの為にしてはどうかと言う事を決めても、結婚は相手のある事だ。
簡単には決まらないだろうし、ましてや数ヶ月前に優花を連れて帰って来た時に6年後までは・・・・と言ってすぐに結婚する事は口にも出さなかった。
さすがにそれほどまだ時間が経っていないのに、それを変える事にした理由は何なのかとスングに言いにくい。
病気の事を口に出して言うつもりはないが、嘘を吐く気にもならない。
「夕食の買い物に行って来るね。」
近くのスーパーにハニが買い物に出かけると、スンジョはスングに電話を掛けた。
「スングか?」
<お父さん・・・・どうかしたの?>
「今、お母さんと日本に来ているんだ。話がしたいから、優花さんとご両親の都合を聞いてくれないか?」
<いいけど・・・・何かあるの?>
「会ってから話すけど、出来ればどこかちゃんとした場所で話をしたい。」
<判ったよ。優花に聞いてみる・・・で・・今、どこのホテルに泊まっているの?>
「ホテルじゃないよ。マンスリーマンションを借りてる。こっちに用事があってお母さんと一緒に来ているんだ。」
<お母さんも?会いたいな、場所を教えてよ、会いに行きたいから>
会いに行きたいと言うスングに場所を教えてスンジョは電話を切った。
身体に負担のない手術でも、さすがに退院したばかりで疲れて来た。
ハニが使っているベッドに入って、目を閉じると自然に眠りの世界に入って行った。
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