未来の光(スング) 71
親子三人でタクシーの後部座席に座るのは初めてかもしれない。
背の高いスンジョとスングの間に挟まれて、ハニが小さく見える。
「親父・・・何処か病気じゃないのか?」
「風邪をひいて熱があるだけだ。」
スングは医学生で知識はスンジョには及ばないが、医者が4人もいる家庭で育っているから、スンジョがただの風邪ではない事は感ずいていた。
「ふぅ~ん・・・いい年をして、新婚旅行で張り切り過ぎたのか・・・・・」
「スングったら・・・親にそんな事を言うなんて・・・嫌らしい・・・」
顔を赤くしたハニを見て、スングとスンジョは笑った。
日本語ではなく韓国語で話しているから、タクシー運転手に判らないから言える言葉だった。
スンジョ達が宿泊先にしているマンションに到着をして、先にスングがタクシーから降りてハニとスンジョが降りるのを待った。
一歩踏み出すスンジョがふらつくと、ハニは咄嗟に支えようとするが身体の大きさを考えなくても支えきれない。
「お袋、オレが連れて行くよ。」
スンジョとハニの子供の一番下の双子の一人も、いつの間にか父の身体を支えるくらいに大きくなっていた。
スングとスアを授かった時に、スンハの子供と同じ歳の我が子を生もうかどうしようか迷った。
不器用な自分に子供を沢山授かり、おまけに最後の妊娠は双子。
何事も動じないスンジョがいてくれたから、双子を育てる事が出来た。
スンジョが身体を壊していた事に気が付かず、子供たちやグミにも内緒にして手術をした事に責任を感じていた。
マンスリーマンションの中は親子3人が入ると狭いが,それでも久しぶりの親子水入らず感があった。
「お茶か・・・ジュースか・・・・・コーヒーよね二人は・・直ぐに用意をするわね。」
「あっ!オレがやるからお袋は休んでいていいよ。」
ハニがポットに水を入れていると、それをスングは受け取ってスイッチを入れた。
コーヒー豆を用意しようと何気なく見たダストボックスに、飲み終わった薬の袋が見えた。
それを拾い出して、薬名を見た。
「親父・・・・手術をしたのか?」
スングがそれを見ればもう隠すことが出来ない。 薬名を見て、何の手術をしたのかスングは見当が付いた。
「智樹おじさんが病院に泊まり込んでいると琴葉さんに聞いたけど、もしかして智樹おじさんが執刀したの?」
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