未来の光(スング) 72
子供の自分に病気を隠して来日した事に、スングはショックを受けた顔をしていた。
知らない状況で優花との結婚の話をして、何事もなく帰国して行くのだと思うと、怒りたくなりそう
だった。
「スング・・・お父さんは、子供たちには心配をさせたくなくて。」
「スンハ姉さんやスンリ兄さんも知らないの?」
「教えていない。」
「おばあちゃんには言えないよな・・・・・親父を頼っているから。」
ショックを隠せないスングと、顔色を変えないスンジョの険悪な空気に、ハニはどうしたらいいのかとハラハラとしていた。
「傷口を見せて・・・・・」
スングに言われてスンジョはシャツのボタンを外して傷口を見せた。
退院してからも何度かハニはその傷口を消毒していたが、まだそれを見る事が怖かった。
「ポートアクセス法?」
「あぁ・・・・・知ってたのか?」
「偶然・・・優花のお父さんがその方法について話してくれたから。傷口が小さくて回復力も早くて、最近この方法が増えていると。親父が知らない間にしていたのなら、本当に素晴らしい方法だよ。」
スングが手を離すと、スンジョはシャツのボタンをすぐにはめた。
「無理しないでよ。ずっと仕事ばかりで、退職したらお袋と一緒に二度目の新婚旅行をするんだろ?」
「ふっ・・・・・そのためにしたような手術だ。どんなことがあっても苦労を掛けたお母さんにその償いをしたいからな。」
昔のスンジョをスングは知らない。 スングの知っている父は、いつも母を労わり優しい言葉を掛ける人だ。 兄弟の中でスンハとスンリが一番賑やかで、家族が集まった時にその二人の傍で黙って座っている父がカッコよくて好きだった。
「他の兄妹にもだが、おばあちゃんには言うんじゃないぞ。」
「判ったよ。絶対に無理しないで、ずっと元気でいてくれよ。」
子供にとって親はいつまでもそばにいて欲しい。
ハニが幼い頃に母親を亡くして寂しい思いをしていた事を子供たちは知っているし、兄のスンスクが妻亡き後も、再婚もしないで子供たちを育てている姿を小さい頃から見ていた。
ミレもフィマンも、両親や祖母に可愛がられているから淋しそうには見えないが、それでも親が元気でいる事が一番。
並んで座っている両親を見ながら、スングは自分が結婚して親になるまで、スンジョとハニに元気でいて欲しいと思った。
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