未来の光(スング) 74
父の手術の事を知ったから、何かあった時に母一人ではスングは心配だった。
両親に相談もしないで星屑の里に泊まることを決めたが、人数の変更が出来るのかどうかは知らない。
「おい、スング・・・突然の変更は無理だよ。」
「そうよ、今の変更は無かった事に・・・・」
カウンターに立っているスタッフは、ニッコリと笑って3人を見た。
「大丈夫ですよ。4名様まで宿泊できる部屋ですので、宿泊記録用紙を作り直しますので、ご夫妻との関係とお名前と年齢をお願いできますか?」
「ペク・スング、息子で19歳です。」
「畏まりました・・・・・・」
スタッフはスングの名前を聞くと、パソコンでデータ変更を直ぐに始めた。
「スングったら・・・相談もしないで勝手に決めて・・・学校を1週間も休むの?」
「今週は単位調整期間なんだよ。」
「単位調整期間?」
「テストや提出物を出していなくて、点数が危ない学生の為の期間なんだ。」
ハニとスングが話している間に、スンジョは新しい宿泊記録に署名をしていた。
宿泊人数の変更に伴い、部屋のアメニティの準備をするために少し待つことになった。
小さなロビーに備え付けのソファーは、座り心地がよくゆったりと寛ぐことが出来た。
「小さな子供じゃあるまいし、今まで他の兄妹と一緒じゃない旅行は付いて来たことないじゃない。」
「いいだろ。結婚したら、もうこうして一緒に来ることは出来ないのだから。」
「まぁね・・・・1週間も優花と離れた事が無いから、帰ったら優花の機嫌を取らないと。」
無意識に言ったスングの言葉にスンジョはニヤッと笑ったが、ハニは眉間にしわを寄せてスングを睨んだ。
「どういう事?結婚もまだしていないどころか、許可をしたばかりでしょ?スンハやスンリやスアみたいに結婚する前に子供が出来るような・・・・・・」
ここが日本で、ハニは日本語が話せないからよかったが、狭いロビーに響くハニの声。
ハニ自身もハッとして、口を手で隠した。
「大丈夫だよ、ちゃんと対策はしているから・・・てか、何もしていないよ。優花とただブラブラと歩いて、甘い物を食べたりするのを付き合っているだけだよ。」
「本当なの?」
「本当。」
「何もしていないって・・・・・キスもしていないの?」
「それは・・・・・まだ大学に入って1年も経っていないのに、結婚を許してもらったからって子供が出来て焦るようなことはしていないよ。優花は一応自分でアレは持っているし、親からも与えられたみたいだけど、オレは大学を卒業をするまではしないと優花に誓ったから。」
サービスドリンクを飲んで話をしているうちに、部屋の用意が出来たと伝えられて3人は星屑の里のスタッフの後に付いて、正面玄関を出た。
「ここから当宿の車に乗って、お部屋まで案内します。お客様の車の鍵は先ほどお預かりして金庫に保管させていただきました。」
スタッフの運転で、さらに森の奥に10分くらい入ると、バンガロー風の小屋が幾つも並んでいた。
まるでそこは、夢の国のように静かで静養をするのに最適な場所だった。
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