未来の光(スング) 75
スタッフが宿泊をする部屋の鍵を開けると、ドアを大きく開けて三人に室内がよく見えるようにした。
「こちらの部屋が、入江様がオーナーの部屋でございます。」
木の温もりが伝わるそのドアを開けると、部屋の中に木の香りが漂っていた。
「こちらの部屋が、息子様に用意させていただきました部屋でございます。」
急遽スングが追加した部屋は、シングルベッドが二つ並び、一つは使用予定が無いからカバーが掛けられていた。
「こちらが御夫婦の主寝室になります。」
キングサイズのベッドが中央にあり、ゆったりとした造りになっている。
スタッフがバス・トイレ・キッチンの説明をすると、ハニの顔が不安になって来た。
「あの・・・食事は・・・・・」
「最初にチェックインをした建物の二階にレストルームがございます。そちらで召し上がっていただくことも可能ですが、ほとんどの宿泊される方は、自炊されていらっしゃいます。」
「自・・・自炊・・・・・」
「食材や日用品は、池の畔にあります売店でご購入をすることが出来ます。」
一通りの部屋の説明をすると、スタッフは部屋を出て外に停めてあった車に乗ってまた戻って行った。
「自炊・・・・・」
「お前の腕前はオレもスングも判っているし、普通の物を作ればいいよ。」
「でも、せっかく・・・・・」
せっかく静養に来たのに、料理をするとは思っていなかったと、ハニは上げ膳据え膳が出来なくて残念がった。
「オレが作るよ。」
「スングが?作れるの?」
ポケットからスマホを取り出して、両親の方を見てニヤッと笑った。
「検索してレシピを探すよ。料理なんて、書いてある通りに作れば簡単だ。ただし、親父の好きなお袋の玉子焼きだけは作れないから、それだけは作ってくれよ。」
「玉子焼きは簡単だから私に作らせてくれるの?」
「違う・・・・オレには出来ないから、お袋の玉子焼きは。」
ハニはスングからの褒め言葉に嬉しそうな顔をした。
「そう?じゃあ、朝食の玉子焼きはお母さんが作るからね。じゃあ、荷物を片付けるから、スングはお父さんと話でもしていて。」
ウキウキとして鼻歌を歌いながら、ハニは自分たちの荷物を寝室に運んで行った。
その姿を見ながら、スンジョとスングは笑いをこらえていた。
「オレがいつ、お母さんの玉子焼きが好きだと言った?お母さんを煽てる言葉を言ったのは理由があるんだろ?」
「まぁね、卵の殻を態々入れるのも難しいからね。」
スングもしっかりとスンジョの遺伝子を受け継いでいた。
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