未来の光(スング) 77
キエとの事で父にも言っていない事を、両親に隠さずに全てを話そうと決めた。
「キエさんと・・か・・・」
「言わなくていいわ。」
スングが話し始めた時、ハニはそれを止めた。
「でもちゃんと話さないとお袋は気にするし、相手はお袋の親友の娘だよ。してはいけない事をしたのだから、後から判ったら・・・」
「スングはお母さんの性格を知っているでしょ?知らなければ知らないで、気にして悩んでしまうし、知ってしまえばまた悩んで落ち込んでしまう・・・・・・それならお母さんは知らないでミナおばさんとこれからも親友として接し、その娘とスングの事を変な想像をしないで会っていた方がまだいいわ。」
「変な想像って・・・・親父から聞いたの?」
「聞かなくたって、お母さんの想像力はスングも判るでしょ?それに、相手は大人の女性だったから・・・・・・したんでしょ・・・その・・・」
「うん・・・成り行きで・・・」
「忘れようね。もうキエさんとは終わったのだし、あなたは優花さんと結婚することを決めたのだから。過去を振り返らないで、前だけを向いて行こうよ。お父さんとお母さんにも色々あったけど、過去を振り向かないで前を向いて来たから、今のスング達と沢山の子供に囲まれて過ごす事が出来たの。」
聞かない方が一番いい事もある。
昔のハニなら聞きたくてスングが言い出したら細かく知ろうと思っていた。
人はどんなに親しくても、それが家族であっても言わない方がいい事もあるし、知らない方がいい事もある。
スングにしてもキエとのことはずっと心に秘めて気にしていた事も、それはスング自身が傷ついていたから秘めていたのだと思った。
「お袋・・・・・・ごめんなさい・・・・・」
「もう、終りよ。じゃっ、食後のコーヒーを淹れるわね。」
星屑の里での初めての夜。
まだ体調が万全ではないスンジョが早くに休むことにすると、ハニも一緒にベッドに入った。
ふたりの寝室の隣のスングの部屋から話している内容は聞こえないが、電話でなにかを話をしているのが聞こえる。
話している相手が誰なのか、スンジョにもハニにもよく判る。
「ハニ・・・」
「ん?」
「お前、本当はスングとキエさんとの事、聞きたかったのじゃないのか?」
「想像が付いたわ・・・・たぶんあの頃だって判ったの。遅い時間に学校から帰って来た時、女性の香水の香りがしたし、それがキエさんが付けている香りと同じだったから。キエさんも一人子供が生まれて、直ぐにまた次の子供を妊娠したし・・・・一時でも気持ちを通わせていた人の事を思うと、スングも辛かったと思う。あの子も傷ついているのに、聞き出す事なんて親として出来ないわ。」
「お前も随分と昔と比べると変わったな。」
スンジョが抱き寄せると、ハニはクスクスと笑ってスンジョの胸に顔をうずめた。
「ヘラから言われたの。」
「ヘラから?」
「スンジョ君の事を諦めていたのに、スンハを妊娠した聞いた時、ショックだった・・・って。一時でも好きだった人の子供を他の女性が妊娠したと思うと・・・・って。スンリとソラの結婚が決まった時・・・複雑だったって。スングも、私にずっと隠していられなくて、言いたかったのかもしれないけど、もう過去の事を引きずらないで幸せになって欲しいわ。」
過去のスンジョとヘラの事を、スンリとヘラの娘ソラが結婚して子供が生まれた時、ヘラと話をしていて知らなかったヘラの思いを知る事が出来て、もう過去を振り向かないで前に進もうと思う事にしたのだった。
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