未来の光(スング) 81
日本旅行のお土産をグミに渡すと、昔撮影旅行で行った時の事を思いだしたのか、どこに行ったのか、ここには行かなかったのかと、記憶を頼りに懐かしい写真を広げてスンジョとハニが帰宅してから遅い時間まで、二人の息子夫婦といつもより長くリビングで過ごした。
「お母さん、もう休みませんか?私とスンジョ君は明日からずっと一緒にいますから。」
「そうね、スングの話しももっと聞きたいけど、明日にした方がいいわね。あなた達も二度目の新婚旅行で疲れたでしょうから。ミア、ひと月の間、私の傍に付いていてくれてありがとう。今夜はゆっくり休んでね。」
「ありがとうございます。お姉さん、先に休ませてもらいますね。」
スンジョと酒を飲んでいるウンジョに、先に眠る事を伝えて客間にミアは入って行った。
ハニはグミの車椅子を押しながら、離れに移る為に開いたエレベータに乗った。
車椅子のグミは、スンジョとハニとスングが星屑の里で写した写真を見て、その三人の姿を指でそっとなぞった。
「スングはきっと幸せになれるわよね・・」
「ええ、スンギ以外みんな若い結婚ですけど、きっと幸せになると思います。」
「そうね・・・私も結婚は早かったけど、スチャンさんが広い心で私を自由にさせてくれて・・・・・」
グミは、今はいないスチャンの若い頃の姿を思い出していた。
我儘に育った自分を、押さえつけることも無く、苦労をしたのは結婚した当初だけで、ずっと幸せに過ごす事が出来た。
「お母さん、着替えの準備をします。」
ハニはクローゼットからシルクパジャマを持って来ると、それをグミが着替えやすいように広げた。
「ハニちゃん、今日はあなたが買って来てくれた寝巻を着るわ。昔ユミお姉さんが、結婚を父に許された時に帰国のお土産に持って来たのを思い出すの。ユミお姉さんも天国で私を待っていると思うと、昔着た浴衣の感触を思い出したくて・・・・」
最近のグミは、スチャンやユミと幼くして亡くしたルミのこと、ハニとスンジョの生れなかった子供のことをよく思い出していた。
自分ももうその場所に行く時期が来ている事に、心準備を始めているのだった。
「この最初に着た時に冷たくても、直ぐに身体に馴染むのが良いと日本に嫁いで行った姉が言っていたわ。」
実の息子よりも嫁のハニやミアをグミは可愛がっていた。
ハニは高校3年の時から一緒に住んでいるからなのか、本当の母娘のように顔つきまで最近は似て来たとスンジョに言われていた。
ハニの介助でベッドに横になると、空調の設定温度を確認し加湿器に水を入れ、ハニたちの寝室に連絡を入れられるようにスイッチをオンにした。
忙しく動き回っているハニを、脳裏に焼き付けるようにグミは見詰めていた。
「お母さん、天井灯を消しますね。」
「・・・・ハニちゃん・・・・」
「はい、どうかしましたか?」
「スンジョ・・・・・どこか身体が悪いのじゃない?」
グミの言葉に、ハニは天井灯を消すリモコンを床に落とした。
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