未来の光(スング) 82

「日本で治療をして来たのでしょ?」 

「お母さん・・・」 

「息子に孫がいても母親よ。息子の顔色が良くないのには気が付くし、ハニちゃんと日本にひと月も旅行に行って来るなんておかしいじゃない。今まで一度もそんなことは無かったし・・・・・」 

「それは仕事が忙しくて・・・・・」

 「そうね、それはそうかもしれないけど、大学と病院を辞める少し前から、痩せ始めていたし時々辛そうにしていたから。ウンジョともこのひと月聞こえないようにずっと連絡をしていたみたいだし。私は大丈夫だから話してみない?ハニちゃんだって、スンジョの事を一人で抱え込むのは大変でしょ?」

 言うしかないのかもしれない。

 高齢であっても親は親、子を持つ親の気持ちはハニにも判る。 


「心臓の・・・・心臓の手術を智樹さんの病院でしてきました。」

 「心臓が、悪かったの?それに手術って・・・そんな大変な・・・・」 

「新しい手術で、それほどひどい症状でもないけど、後進の為にその手術をして・・・それと退職した後に、私とのんびりとした時間を長く過ごしたいからって・・・・・」

 「まぁ・・・そうだったの・・・スンジョらしいわね。自分の身体を使って、後進の為のデータを作るって平然と考える反面、ハニちゃんと老後を過ごしたいからなんて・・・私が心配をすると思って言わなかったのね。大変だったでしょ?ハニちゃん一人でスンジョに付き添って・・・よく見守ってくれてありがとう・・・・スンジョが元気で帰国をする事が出来たのは、ハニちゃんのお蔭ね。」 


グミの労わりの言葉に、ハニは日本でスンジョが手術を受けている時の不安を思い出し、声を出して泣き出した。 

「泣いていいのよ。ハニちゃんは、スングと優花さんの事も考えなきゃいけないし、妊娠中のスアの事もあるから、心がいっぱいいっぱいだったでしょうに・・・ハニちゃんは、スンジョにその想いを言わないとダメよ。あの子はハニちゃんの事を判っているようでまだ判っていないのよ。子供を育てるのもハニちゃん任せで、7回も妊娠したのに・・・・妻の身体だってそれなりに負担を掛けているのだから、病気の事でハニちゃんの心に負担を掛けさせないようにしないと。」 

明るくて元気なハニも、年を重ねて行くうちにスンジョの行動に合わせある様に静かにしていることが多くなった。

 泣き虫でよく泣いていたハニは、スンジョの言うとおりに動き、いつの間にか自分の感情を見せない様になっていた。  


「お母さん、スンジョ君は私を大切にしてくれていますから大丈夫です。スンミを自宅で生んだ時も産後の体調を心配して、パク先生の所に通うように手配をしてくれ、そのお陰でスンスクをすぐに授かることが出来、スンギが生れて・・・・・40歳を過ぎてからスングとスアの双子を授かれたのは、スンジョ君がパク先生と連携をして私の身体を考えてくれたから。沢山の子供も、亡くした子供が私にくれた宝物です。母を早くに亡くしたから兄妹もいなくて、淋しい日を過ごしたので、その事を知っているスンジョ君が叶えてくれたの。私こそ、不器用なのに子供を沢山生んで、お母さんが助けてくださったお陰で看護師としての仕事を続ける事が出来ました。ありがとうございます。お母さんと知り合えることが出来て、すごく幸せな嫁でした。」


血の繋がりはない嫁と姑でも、実の母娘以上にお互いを必要として40年以上暮らして来た。 

グミは自分の娘にしたいくらいに可愛がっていたハニを嫁にして、沢山の孫を生んでくれたハニに感謝をしていた。 


「あら?内線が鳴っているわ。きっとスンジョが戻って来ないハニちゃんを心配してるのね。」 

ハニは内線電話に出ると、スンジョが急いで準備をするようにと言われた。 

「お母さん・・・すぐに病院に行く事になりました。」 

「スンジョが具合が悪いの?」 

「スアが破水をして、病院に行ったとサンからの電話があったそうなんです。」

 「まぁ・・・予定日よりも早いわね。早く行ってあげて。ミアもウンジョもスンスクもいるから、直ぐにスンジョと病院に向かってあげて。きっと急な事だから、いくら看護師をしているサンでも不安だと思うわ。」 

スアの予定日は来月。

 昨日帰国の連絡をした時は、まだ生まれそうもないと言っていた。

 スアはパラン大病院から近い所に住んでいるからすぐに病院に行けるが、まだ若いスアは不安で仕方がないだろう。 


ハニは母屋に戻り、直ぐにタクシーを呼ぶと、スンジョと一緒にパラン大病院に向かった。

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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