未来の光(スング) 88

玄関の鍵を開けてリビングのソファーにスンジョが座ると、ハニは大きく息を吐いたかと思うとフラッと倒れた。

 「ハニ!ハニ!」

 咄嗟にスンジョは立ち上がり、ハニの身体を支えた。

 「スンジョ君・・・・」 

「大丈夫か?」

 身体を支えてソファーに座らせると、ハニはぐったりと後ろにもたれた。

 「お袋の見舞いに、お前は毎日行っているから疲れたんだな。」

 「そんなことは無いよ、元々貧血気味だし。」 

そのままでいるようにと、肩をポンと叩いてキッチンに湯を沸かしに行った。 

こんな時スンジョはハニが何をいつも飲みたいのか、何も言わなくても判るくらいの年数を過ごしていた。 


「ほら、温かいココアだ。」 

マグカップを渡すと、一瞬触れたハニの冷たい指先。

 冷たい両手を温めるように、マグカップを持つと一口ココアを口に含んだ。

 「おいしい・・・・・」 

また一口、また一口とゆっくり飲むと、顔色も徐々に戻って来た。 

「お母さん、時々話した内容を忘れちゃう事を凄く悲しんでた。」

 「仕方がないよ。いずれはオレ達も、すぐに話した事を忘れてしまうようになるんだから。」

 「寂しいね・・・・でも、私は日にちとかは忘れても、スンジョ君の事忘れないよ。」 

「有り難いね・・・・ハニが年老いてもオレだけを見ていてくれるのは。」 

昔のスンジョ君なら、こう言っただろう。 


出来ればオレの事を忘れて欲しいくらいに、くっ付いて来るなよ。


「クスッ」 

「どうかしたのか?」 

「ううん、昔私がラブレターを渡した時のスンジョ君が、今のスンジョ君を見たらどう思うのだろう。」

 「ふっ・・・・・記憶したことを忘れる能力が欲しいと思うだろうな。」

スンジョ自身も、昔の自分の事を思いだすと、あの時にハニに言ったりした事を忘れたいくらいに後悔していた。 

「ハニを好きになって、お袋が急がせた結婚だったけど、今はそれも良かったと思えるよ。スンハはお袋とそっくりで、たまに何を仕出かすか今でも判らないけど、ペク家にはああいう性格の人間が一人は必要なのかもしれない。スンリはいったい誰に似たのか・・・・一時、悩んで荒れた時もあったけど、あれはオレとヘラの事で悩んでいたのだから、オレの責任でアイツを傷つけた。」 

スンジョが言うことを聞きながら、ハニはウトウトとし始めた。 


お前も疲れているよな。 

オレの心臓を気にして、いつも一人で何でもしようと思って、苦手な車の運転までするようになったから。

 あんなに車の運転はしたくないと言っていたお前が、オレの為に車でお袋を毎日見舞いに行っているのだから。 


愛しているよ、ハニ・・・・・



ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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