未来の光(スング) 89
お袋が亡くなってもう何年も経つが、ハニが気落ちをしてからなかなか気力が戻って来ない。
実の母娘のように高3から一緒にいたのだから尚更だろう。
「食事を食べないと・・・・・」
「食べたくない・・・」
「オレが作ったオムライスが好きだったのじゃないのか?」
「判っているくせに・・・・実の母親を亡くした時はまだ小さかったから、淋しくてもすぐに立ち直れたのだけどね・・・・お母さんはママの代わりに本当に私に良くしてくれて・・・スンジョ君と結婚が出来たのもお母さんのお蔭だし・・・・」
「ほらこれ・・・・」
スンジョはグミの葬儀の後からずっと床に伏しているハニの目の前に、一通の手紙を出した。
「日本からだ・・・」
「スング?」
「あぁ・・・・優太の写真が入っている。歩けるようになったら、目が離せなくて大変だって。」
ハニは起き上がり封筒から写真と手紙を出した。 スングの目元と優花の口元似ている可愛い孫の写真に、塞ぎ込んだ顔に赤みが射した。
「もうこんなに大きくなったのね・・・・」
写真を見て、スングの手紙に目を通した。
スングはメールや電話よりも、手紙に優太の成長した写真を同封してよく送って来てくれる。
結婚してすぐに優太を優花が妊娠したから、もう二年ほど会っていない。
「スンジョ君・・優花さん二人目を妊娠したのね・・・」
「二人目じゃない・・・二回目と書いてあるだろう。双子らしいよ・・・・」
「スアが双子を二組生んで、スングが双子を一組・・・・孫の数が多くて頭が混乱しそう・・・・」
スンジョとハニの寝室には、孫たちが写ったフォトスタンドが、置き場がないくらいに所狭しと置かれていた。
「インハも父親になるから、オレ達は孫どころかひ孫の顔も見る事が出来るんだ。お袋が亡くなっても孫やひ孫は誕生する。まだお前にもオレにも未来はある。もっと元気になれよ。」
ハニの額に掛る髪をすくって耳に掛けると、スンジョは自分の胸に抱いた。
「判っているんだけどね・・・・何だか気力が無くて・・・私もあと何年生きられるのかと思ったら・・・」
「おいおい、オレを置いて逝くのか?まだハニとしたいことは沢山あるぞ。お袋の介護で、お前の念願の甘いデートも出来なかったし、第二の新婚旅行から帰って第二の新婚生活もしていない。スンスクもパラン高校の姉妹校の校長になってこの家を出て行ったし、ミレもフィマンもスンスクに付いて行って、本当に二人だけのペク家になっただろう、お前が昔みたいに賑やかに、食器を割ったり躓いて転んでくれないと、静か過ぎて寂しいだろう。今日は風もなく天気がいいから、オレとデートをして欲しいと頼んではいけないかな?」
「そうね・・・・スンジョ君の気が変わらないうちに行かないと、でーとに行けなくなるわね。起きるわ・・・・・」
スンジョ君は本当に優しくて素敵な私の旦那様。
こんなに幸せな日が来るとは思わなかった。
沢山の子供を授かって、その子供たちが私達に孫と会わせてくれて・・・・・
夢のような毎日が永遠に続いて欲しい。
0コメント