思わぬ同居人 2
家に帰るなり、ウンジョがオレに訴えるように駆け寄って来た。
「お兄ちゃ~ん、学校から帰って来たら、大変なことになってた!」
ウンジョに腕を引っ張られるまま部屋に連れて行かれると、眩暈がしそうなとんでもないウンジョの部屋になっていた。
「僕、嫌だよこんなの。白い家具にヒラヒラレースのカーテンやピンクの布団に・・・・・・見てよ壁まで花柄だよ。」
「どう?素敵でしょ?ずっとこんな部屋にしたくて・・・・ようやく夢が叶ったわ。」
お袋の異常過ぎる行動が、ついにここまで来たのかと開いた口が塞がらなかった。
「まるでこれは女の子の部屋じゃないか。」
「そうよ!ハニちゃんは可愛い女の子だもの。今日からウンジョはお兄ちゃんと一緒の部屋よ。」
お袋に言われて自分の部屋に入ると・・・・・ウンジョの机にベッド、そして書庫まで運び込まれていた。
「おい!なんだよこの部屋は。」
20畳はあったオレの部屋は、まるで倉庫に間借りしているみたいだ。
「何だよ、これは。同居人ならゲストルームを使えばいいだろう、ゲストルームは二部屋もあるんだから。」
「客間の一部屋はギドンさんが使うけど、もう一部屋は開けておかないといけないじゃない?同じ学校の同級生同士仲良くしなさいよ。あぁ~いけない、私はお買い物に行かないと。なんて言ったって、念願の娘が出来るんですから。あ~~忙しい忙しい・・・・・」
「お兄ちゃん・・・」
あの燥ぎように、何かお袋が企んでいることは判る。
夕食をこんなに急かされるとは思わなかった。
「ほらウンジョ、早く食べちゃってね。もうすぐ可愛いお姉さんが来るんだから、片付けて待っていないと。」
ウンジョは呑み込むように、『急いで食べても美味しくなんかない』と文句を言いながら食べていた。
いつも通りオレは部屋に入って読みかけの本を読んでいたら、ウンジョがアイスクリームを持って入って来た。
「お兄ちゃん、このアイスクリーム食べていい?」
「いいよ。」
ウンジョも可哀想だな、あのバカ女に部屋を乗っ取られて。
オレの部屋が狭くなったって、どうせ家が建つまでの間だ、それくらい我慢するか。
「お兄ちゃん・・・・今日来る子・・・同級生なんだよね。どんな子?」
「さぁ・・・・・お兄ちゃんは1クラスだけど、7クラスだから話はしたことはないから知らないな。」
「7クラス?7クラスなの?バカなんだ!」
バカ・・・・か。
確かにあの手紙は酷かったな。
反切表(日本でいうと五十音表)も、知らないみたいで誤字脱字が酷かった。
ちょっと直すつもりで書いた手紙を、気が付けば採点までしてしまった。
間違いを直してやろうと思って添削してやったのに、何だよ泣いて助っ人まで出して来て。
有り難いと思え。
あんなの学校の先生だって、高3になった今頃は教えてくれないぞ 。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、ギドンさんたちが、いらしたから手伝ってあげて。」
お袋が玄関でオレを呼んでいる声で、本を閉じて渋々降りて行った。
オレが来たことにも気が付かないあのバカの荷物を運ぶのか?
後ろにオレがいることも知らず、良い子ぶって話しているお前がどんなリアクションを取るのか・・・・・
ああ~面白い。
「何か運びましょうか?」
「大丈夫です、そんなに荷物はないので。」
小汚い黄色のぬいぐるみを抱えてオレの方に振り向いたバカなオ・ハニ。
目をパチクリと瞬いて涎を今にも垂らしそうにオレを指差した。
「ペ・・・・・ペク・スンジョ・・・・どうしてあなたが?」
オレは表札を指差して言ってやった。
「ここ・・・オレの家だから。」
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