思わぬ同居人 12
「お兄ちゃん、今日もお夜食は二人分よね?」
「ああ・・・・」
サッサと夕食を食べて、鼻歌を歌いながらキッチンに立って夜食を作り始めたグミを、スンジョは眉間に皺を寄せて睨んだ。
「おばさん、いつもすみません。あまり気を使っていただかなくても・・・・」
「気にしないでね。ハニちゃんが私の夢を一つずつ叶えてくれるのだから。」
グミのウキウキな声とは反対に、不機嫌な声が聞こえて来た。
スンジョの声とは違う声。
「ったく!バカのハニが来てから、お兄ちゃんの平穏な生活が乱されて・・・・・・僕の宿題だって見て欲しいのに・・・・・」
「ウンジョ、お前はお兄ちゃんが見なくたって、勉強は問題ないだろう?」
意地悪く皮肉った笑顔でハニをチラリと見た。
ハニはそんなスンジョに舌をペロッと出して、スカートのポケットからスンジョの弱点をチラつかせた。
「おい!」
スンジョの少し強い言い方にも気にもしないで、飛び跳ねるように2階に向かって小走りで駆け上がった。
「スンジョ君、悪いなぁ・・ハニの頭が悪くて君の勉強の妨げになっているんじゃぁ・・・・・」
「おじさん、大丈夫ですよ。」
「そうよそうよ、ギドンさん。こちらの方がハニちゃんにお礼を言いたいくらいよ。スンジョが勉強をしたのなんて初めてなんですから。」
ギロリとスンジョがグミを睨むと、グミは夜食の準備をしている手元を見ている振りをした。
「ハニは頭は悪くないですよ。ただ勉強の方法が間違っていただけですから。それに、オレも勉強の復讐をしているつもりですから。」
ギドンにそう言ってスンジョは頭を下げて、2階に上がって行った。
「今日はこの問題とこの問題・・・・・それから英語はこれ・・社会は・・・・明日でいいか・・・」
教科書に付箋紙を貼り、ポイントの説明をした。
本当なら基礎から教えないといけないが、時間がないからポイントを伝えるだけでもかなりの量だ。
「ねぇ・・・・基本問題ばかり・・・・応用をやった方が・・・」
ペンでハニの頭をコツンと叩いた。
「バーカ、何を言っているんだ。基本さえ理解できていれば応用なんて簡単だ。それに今のお前にそこまでやる余裕があるか?」
「うん・・・・確かに・・・・・・」
「それと、教科書にこんなイタズラ書きをしているようじゃ、勉強が出来るようになんかなるかよ。」 ハートやら星やら・・・<スンジョ・・・スンジョ・・・ペク・スンジョ大好き・・・・>とカラフルに書かれている教科書はとても高校3年の物には見えなかった。
「は~い、もう書きません・・・・」
「あと・・・・・これもやっておけ。オレが作った予想問題だ。」
いつの間に作ったのか、明日の試験の予想問題。
自分のために作ってくれたスンジョの気持ちが有り難くて、お礼を言おうと横を向くがスンジョは素知らぬ顔で今までハニが解いた問題を添削していた。
「あ~出来た、スンジョ君・・出来た・・・・・・あっ!寝ちゃったんだ。」
いつの間にか机に伏して眠っていたスンジョ。
その顔と同じ高さに二分の顔を持って行き、ハニはスンジョの顔を眺めた。
「いつも9時には眠っていたのに、私に付き合って遅くまで起きていてくれたんだものね。ゴメンね・・・・寝不足だよね・・・フフフ・・・・・綺麗な顔・・鼻もスーッと通っていて、肌もこんなに男の人で綺麗なのを見たのは初めて・・・・・・・勉強を教えてくれて・・・・・・・コマウォ・・・・・」
ハニは、間近で見るスンジョの顔をいつまでも眺めていた。
一瞬明るい光が光ったが、スンジョもハニも気が付かなかった。
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