思わぬ同居人 17
廊下を歩くと自分を見る人々の視線が纏わりつくように感じる。
アイツが同居してから、というよりアイツがオレに手紙を渡してから、人の視線が以前よりも好奇に感じられていたが、今日はそれ以上に鬱陶しかった。
オレの姿を見てはボソボソとに何かを言っているが、そちらを見ると顔を隠して逃げて行ってしまう。
静まり返った自習室に入れば、うわさ好きな人物からの視線から逃れることが出来るはずだった。
ドアを開けたら皆一斉に机の上に本を広げて、その下にあるパソコンのモニターを隠した。
一人二人ならそれほど気にならないが、自習室で勉強をいつもしている生徒たちが妙にオレの様子を気に掛けている。
自分の座席に行こうと歩いていると、ふと見えた本で隠している生徒の机。
机の下に入れられたパソコンのモニターに映っていたものは・・・・・・
何だ?なんの写真だ?
どこの机の下のパソコンのモニター画面は、自分が自宅の机に伏している画像。
その写真がそれだけなら別にどうでもいいのだが、眠っているのはハニの部屋で、伏しているのはハニとオレ。
隠しようがないほどハッキリと、ハニが大きな口を開けて涎を垂らして眠っている画像が、オレの顔に今にも付きそうに間抜けな顔をして写っている。
やられた!
嵌められた!
あのはた迷惑な同居人のオ・ハニ!
スンジョは自習室で勉強をするどころではなくなった。
入ったばかりだが、直ぐに自習室から出た。
廊下に出ると、教頭が自習室の中に入ろうとしていた。
自習室は原則、途中退席は禁止。 体調不良や緊急事態以外は、必ず一時限90分以上を自習しないといけない。
超難関大や海外の大学を受験する1クラスにいたっては毎日出席しないといけない。
「スンジョ君、どうしたんだ?」
「やる気が失せたので帰ります。」
「原則は・・・・・」
よほど頭に来ていたのか、教頭をスンジョは睨みつけた。
「ま・・・・君なら、どこで勉強しても構わんが・・・・・・」
教頭のお気に入りで助かった。
あの迷惑な同居人に、一言言っても果たして効果があるのか。
廊下を歩けば、あの写真を見た生徒たちがヒソヒソとオレの顔を見ながら話している。
あの写真はきっとお袋のブログに貼った物だろうが、それを公開にしたのは間違いなくオ・ハニだ。
そこまでしてオレの彼女になったと、全校中に噂を広めたいのか?
あまりにも頭に血が上っていたのか、帰宅する道の景色や人の顔を覚えていない。
このオレがこれほど冷静にさせてくれないはお前だけだ。
絶対に許さないからな。
玄関のドアを開けると、明らかにアイツとお袋以外の女の笑い声が聞こえた。
来客だろうと構わない。
「おい!オ・ハニ。どういうつもりだ!」
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