思わぬ同居人 19
寝苦しくて開けた窓から生温かな風が頬に当たる。
エアコンを入れるよりも、この風が心を落ち着かせる。
数時間前に開け放たれた窓から聞こえて来たアイツと誰か・・・・
きっと、いつもつるんでいるトッコ・ミナかチョン・ジュリと話でもしていたのだろう。
言い過ぎた。
誰かと話していて聞こえた声が泣いていたことが判る声だった。
面と向かって憎まれ口を叩くのに、自分の言いたいことも言わせてもらえないくらいにオレが一方的に怒鳴ったのに、電話の相手にオレへの怒りを言うどころか、オレを擁護するなんてアイツの頭の中はどうなっているんだ?
頭もよくなく場の空気も読めないアイツなのに、オレが思うよりもアイツは優れた物を持っているのかもしれない。
暑苦しく眠れない夜が明けて、窓を開けると湿度の高い風が、今日一日が嫌な事が起きるような予感がした。
汗を流そうと着替えを持ち、まだ眠っているウンジョを起こさないように静かに部屋を出た。
バスルームに入り少し温めのシャワーの水量を強く掛けて、まだ眠気のある頭を目覚めさせた。
部屋に戻るといつの間にかウンジョはベッドにいなかった。
「ウンジョ、起きたのか。」
オレはこの時にはまだ土曜日である今日に何があるのかは知りもしなかった。
階段を下りようと踏み出すと、朝からいつもよりもリビングが賑やかだ。
お袋とミナとジュリと談笑しているハニを見ると、数日前の夜のあの電話で話していたあのハニはどこに行ったのかと思うくらいに、バカ騒ぎをしているじゃないか。
「朝っぱらから何だよ、騒々しい。」
「あら!お兄ちゃん、出かけるわよ。」
お袋は突然とんでもないことをやる。
突然というより、いつもだったっけ。
「土曜日だけど学校がある。」
「一日くらい休んじゃいなさい。」
「はぁ?受験生だけど。」
「お兄ちゃん、たまには息抜きも必要よ!ハニちゃんもミナちゃんもジュリちゃんも・・・・・・さっ、今回のこのイベントの名前は・・・・名づけて!」
「オートキャンピング!」
何がオートキャンピングだ。 そう心の中で愚痴ると、ポケットの中で携帯が鳴った。
<<お兄ちゃん!!助けて!寝ている間に拉致されたよぉ~>>
親父はお袋の言いなりで、こういう風だからお袋の歯止めが利かなくなるんだ。
どこで嗅ぎつけたのか、ホン・ジャンミンまで着いて来ていた。
ジャンミンはオレに馴れ馴れしくて、ハニよりも鬱陶しくて仕方がない。
オレの中でジャンミンは、頭の悪い女よりもさらにランクの下の鬱陶しいだけの女で、一番嫌いというよりも関わり合いたくない部類の生き物だ。
水着に着替えたアイツは今どきの子のジャンミンの鬱陶しい女のこれ見よがしの水着ではなく、アイツらしくて結構可愛くてドキッとした。
「ほら!これがいるだろう。」
スンジョがポンと放る(ほおる)と、不思議そうにハニはそれを拾った。
ミナとジュリと三人で見ていて気が付いたのか、赤い顔をして逃げるオレを追いかけて来た。
こんな風にアイツに追いかけられて、バカになっているのもたまにはいいのかもしれない。
朝、頬に触れた生温かい風と同じ風を感じるが、不思議と気分がよかった。
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