思わぬ同居人 20
ホン・ジャンミンがどうして付いて来たのか。
オレにやたらと纏わりつく人間の中で嫌いなのは、頭が悪くて神経の図太い女。
更に付け加えれば、自分は容姿とも優れている人間だと勘違いしている女。
まさにそれに当たるのがコイツだ。
ハニは自分を高評価はしていない。
ただ、バカなだけ。 そのバカなハニに、オレは何をムキになっているのだろう。
それがまた楽しくて、からかっている自分を分析してみるけど、答えは出そうにない。
冷えたスイカをお袋が用意してくれたのに、ウンジョと追いかけっこか・・・・・
精神年齢が同じ・・・・・・・?
オレは咄嗟に立ち上がって走り出した。
『溺れている。』 ハニは泳げないと言ったのに、海に入って行ったウンジョの後に付いて行けず、海水を見て一瞬躊躇していたと思ったら、服を着たまま溺れたウンジョを助けに海に飛び込んだ。
オレが行くまで・・・オレが行くまで、待っていてくれ。
頼むから、オレの楽しみを消さないで待っていてくれ。
溺れている弟をミナに任せて、オレはハニを助けた。
泳げもしないのに飛び込んだハニの勇気にオレは勝てない。
そんなにしがみ付くなよ。
いくら泳げるオレでも、着衣で溺れているお前を助け出すのがどんなに大変か。
海水から上がって、砂浜にハニを抱いたまま倒れ込むと、荒い息をしているスンジョの胸でハニが泣き出した。
「怖かった・・・怖かった・・・・・・」
「ハァ・・・ハァ・・・・泳げ・・・ないのに・・・どうして海に入ったんだ。」
「呼んだのに誰も来てくれないから・・・・」
面倒で憎ったらしいはずのコイツのこの声を聞いてホッとした。
そんな感情を持ったのはお前が初めてで、人を心配したのもお前が初めてだ。
気乗りしなかったオートキャンプ。
思いもしないトラブルに遭ったが、また一つオレは体験したことのない問題があったことに気が付いた。
「スンジョ・・・・ハニちゃんに温かい飲み物を持って行って。」
「おば様、私が・・・・・」
グミがハニに飲ませる温かい飲み物をスンジョの前に出した時に、ホン・ジャンミンがスンジョの気を引こうと進み出たが、グミは温かい飲み物が入ったカップをサッと下げた。
「あなたはいいの、早くみんなのお肉を焼いてくれれば!ほら!焦げちゃうでしょ!」
ハニに言う言葉と違ってあからさまな言い方。
ジャンミンはムッとしたが、オレもお前にまれたことを取り上げられそうでムッとしたことを知っているか?
スンジョはグミが用意した温かい飲み物を持って、ハニが休んでいるベンチに向かった。
「ハニや~、もう大丈夫か?落ち着いたか?」
「パパ・・・・ごめんね・・・心配させて・・・・」
「心臓が止まりそうだったぞ。お前までパパを置いて逝ってしまうのかと思うと・・・・・」
「ごめんね・・・ごめんね・・・・・」
そうだった。
ハニは幼いころに母親を亡くし、父一人子一人で過ごしてきたのだった。
オレの知らないことはないと思っていたが、ハニはオレが知らないことを沢山知っている。
今までオレは何でも一度見たり聞いたりしただけで記憶していたが、まだ記憶して知識となった物が沢山ないことに気が付いた。
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