思わぬ同居人 32
「お兄ちゃん?勉強を見てくれる?」
ウンジョは別にオレが勉強を見なくても出来ているが、時々こうしてオレの事を心配して来る。
「どこが判らない?」
「ここ・・・・・・」
ウンジョはオレのようになりたいと、本当に小さいころからよく言っていたし、似ていることがあった。
ただ違うのは、オレは何もしなくてもすぐに覚えてしまうから、勉強に対してわからないと思ったことはなかったし努力もした事が無い、スポーツにしてもそうだ。
コツさえ知れば何でも出来ないことはなかった。
「ここがちょっと違うよ。この<だから~>はこの言葉を意味しているんだ。」
「そっかぁ~ありがとう、お兄ちゃん。」
まだ素直なウンジョは勉強の呑み込みが早い。
ハニもそうだ。
勉強が出来ないのではなくて、コツを掴めていないだけで、オレがコツを教えただけで、たった一週間で学年順位が50番に入った。
「ウンジョは、大きくなったらどんな仕事に就きたい?」
「僕?僕はゲームが好きだから、パパの会社に入って色々なゲームを開発したり、遊ぶだけじゃなくて人に役立つおもちゃを作りたい。」
「そうか・・・・。」
まだ小さいのに、自分の将来やりたいことをちゃんと決めているんだ。
「でもね・・・お兄ちゃんがパパの跡を継いで、社長になるから僕は開発室の室長になる。それでね・・・・・」
目をキラキラとさせて、将来の話をするウンジョが羨ましく思えた。
「お兄ちゃんは、何になりたいの?」
「お兄ちゃんは・・・・・・・・」
将来何になりたいのかオレは考えたことがない。
「そうだな・・・・・・・パパの会社に入れるかな?」
「入れるよ、入れるよ。だって、お兄ちゃんは、パパがとても信頼しているから。」
そんな風に言うウンジョは、ハニとよく似ている。
ハニもウンジョも、自分の気持ちを素直に伝えることが出来るから、それがとてもうらやましく感じる。
「ちょっとお兄ちゃん、下に行って来るから。」
「うん、もう大丈夫だよ。宿題も終わりだから、お風呂に入ってもう寝るね。」
「ああ・・・・じゃあ、お休み。」
気まずくなった夕食。 いつもなら、食後にコーヒーを淹れて、部屋で本を読んでいた。 誰もいないキッチンで、コーヒーでも淹れようと、ガタガタとカップボードを開けていたら声を掛けられた。
「スンジョ君?・・・・」
「なに?」
「スンジョ君こそどうしたの?物音がするから、泥棒かと思ったよ。」
「コーヒーでも飲もうと思って。」
スンジョがそう言うと、ハニは急に嬉しそうにキッチンに入って来た。
「私が淹れるからスンジョ君は座っていて。」
「美味く淹れてくれよ。」
「任せて!」
任せてと言ったハニ。
ドジで何一つできないハニは、結構香りのいいコーヒーを淹れている。
たかがコーヒーなのに、必死な顔で淹れているハニ。
「はい!頑張って淹れたから、美味しいといいな。」
オレの向かい側に座って、何かオレが言う事を待っているハニ。
一口飲んでその間抜けな顔を見ると、ビックリしたように目をまん丸くした。
オレに美味いのかを聞きたそうにしていたのに、驚くお前が面白い。
「美味しくない?」
「美味いよ。」
「本当?」
「ああ、想像していたよりもお前のコーヒーは美味い。」
たったコーヒーを褒めただけで、五月蝿い位にキャーキャーと喜ぶ単純なお前が羨ましいよ。
想像していたより・・・・・・その後に、お前の淹れたコーヒーはオレの好みだとは言わないでいよう。
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