思わぬ同居人 34

明日が期限の希望進路届け。

 第一希望テハン大学経営学部・・・親父が卒業した大学で親父と同じ学部で勉強をして、親父が大きくした会社の後継者として考えていたんだろう。 

希望通りに何もかも進むわけでもなく、夢に向かって真っすぐに進むのではなく、胸がきゅ~んとする達成感を感じて見たい。 

こうして何かをしてみたいと思ったのは初めてで、それを思うと気持ちが高ぶって来るような気がして来た。 

その高ぶりをもう少し感じてみたい。 

それを感じる事が出来るのは、テハン大にあるのだろうか? 


「スンジョ君、最近あまりしゃべらないけど、どうかしたの?」

 「別に、いつも通り余計な事を話さないだけだよ、お前と違って。」

 「私ってそんなにいつもお喋りをするの?黙っている時だってあるわよ。」

からかうと直ぐにプゥッと膨れるハニの、その素直に自分の気持ちを表すことの出来る性格が羨ましいとかはそれほど思ったことは無かったが、彼女のその時々オレに持っていないものが有る事を羨ましくも思う。 


「スンジョ、志望大学はテハンにしたのか?」

 「まだ決めていません。」

 「願書はもう出す時期じゃないか?」 

「そうみたいですね。」

 無表情に応える息子には慣れているが、テハン大を受験するだろうと思っていたスチャンは、普通の父親と同じように息子がどこの大学に行くのかを心配して聞いたのだった。

 「そうみたいだって・・・・他人事みたいにいつもお前は話すんだな。どんな時も早めにやり始めるお前が、そうみたいだって・・・もう願書は出したのだろ?」

 「出していません。」

 いつもと違うスンジョとスチャンの会話に、グミもハニもギドンもウンジョもハラハラとして来た。

 スンジョは何か問題を起こす人間ではなく、むしろ親がこうしろああしろと言わなくても、自分で解決していた。 


「早く願書を出さないと、テハン大に行くどころか受験も出来ないじゃないか。明日には出しなさい。」

 「オレ・・・・大学には行きません。」

 「スンジョ!」 

「大学に行かなくても、知りたいことがあれば本を読めばわかりますから。」

 「何をバカな事を言っているんだ。大学に行かないで何をするんだ?」

 「さぁ~、アルバイトでもしてみようかと。」

 シンと静まったいつもは賑やかなダイニングは、重苦しい空気が流れた。 

「とにかくご飯を食べて、それから落ち着いて話をすれば、スンジョの気持ちも変わるわよ。」

 「そうだな・・スンジョ君は、頭がいいからテハン大も簡単で、うちのバカなハニと違って志望大学も選ぶ必要もないからな・・・・ははは・・・」

 「パパ!この場所で言わなくてもいいじゃない。私だってそれなりに勉強を頑張っているんだから。」 

「それなりに・・・・」 

いつもと変わらない雰囲気にしようと思っても、不機嫌なスンジョと、スチャンの息子を心配する重い空気はそんなに早く軽くならない。 


「生きている意味が分からないんです。」 

「何を・・何を言っているんだ高校三年にもなって。アルバイトでこの先やって行くなんて、お前は人生を舐めている。世の中そんなに甘い物じゃない。」 

「じゃあ、どうしてみんな当たり前のように大学に行くのですか?誰もかれも当たり前のように大学大学って・・・・」 

「スンジョ!お前は・・・・」 

「スチャン、スンジョ君も頭のいい子だから、お前の考えは判っているよ。まだ締め切りまで時間はある。大丈夫だよ、ちゃんとテハン大を受けるから。」 

おじさんの前でこんな言い方で親父と話をするつもりはなかった。

 今は心の中でおじさんに謝ることしか出来ませんが、何も苦労をしないで今まで来たから、一生懸命に受験勉強をして親が喜ぶ大学に行く事の意味が解らないのです。  


「ご馳走様。」

 スンジョは食事を残し、ダイニングテーブルを離れて自分の部屋に向かった。 

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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