思わぬ同居人 37
オレの顔を見て鳩が豆鉄砲を食らったような顔のハニを見ると面白くて、悪いが吹き出して笑いたいのを止めるのが苦しくて仕方がない。
「なっ・・どうしてここに・・・・・」
「どうしてって・・・ここはオレん家(ち)だからいてもいいだろう。」
「そ・・そうです・・はい・・・」
「で、お前はどこに旅行に行くんだ?こんな遅い時間に。」
「私ね、スンジョ君に悪い事をしたから・・・・・」
思った通りだ。
ハニは尾鰭が付いた噂に、勝手に誤解をして勝手に思い込んで、また自分勝手に落ち込んで。
オレの予想が当たるくらいに、ハニの行動が手に取るように判る。
「そうだな、オレは随分とお前に悪い事をされたよ。」
怒っていないのに少し怒ったような声で話すと、ハニは情けない顔をしてオレを見た。
ちょっとからかってみようか・・・・
「試験の結果が気になって仕方がない思いをしたのは初めてだ。それに、センターでも満点を出したかったのに、満点じゃないのも初めての体験だ。」
「ごめん・・・・・」
「まだテハン大の本試験も残っているのに、お前がこの家を出て行ったら、本試験までのストレス発散が出来ないだろう。」
「ストレス発散?」
「あぁ・・そうさ、お前をからかうと、受験をしたくない気持から大学に行ってみようかという気持になった。ハニがこの家にいてくれるだけで、オレの中のモヤモヤとしたものが消えて、本当にオレの傍にいてくれて楽しかったよ。」
「そ・・・そう・・・・私がスンジョ君の傍にいる事がストレスを取るとは思わなかった。」
「でも、残念だ・・・お前が家を出て行くのならオレのストレスのはけ口探さないといけないけど、そんな時間が無いしな・・・・じゃ・・部屋に戻るよ。」
立ち去るスンジョを引き留めようと、ハニはスンジョの腕を掴んだ。
「本試験まで、スンジョ君がストレスをためないようにするために、私・・・スンジョ君を励まして本試験まで応援をするわ。」
「期待をしないで待っているよ。」
銀のスプーンを贈ってくれたり、食事も摂らないでいたオレの為に、おじさんの不落粥を持って来たり、家族がオレを腫れ物にでも触るように接しているのに、お前はお前なりにオレを励ましてくれた。
口に出しては言わないけど感謝しているよ。
絶対にお前には言わないけどな。
【ありがとう・・・・】なんて。
スンジョの受験のまさかの出来事は、風邪薬だけでは終わらなかった。
センター試験での居眠りは、スンジョの人生が変わる一つの通過点にもなっていなかった。
ハニがこの家に来てから、思わない事が次々と起こり、その都度に自分が慌てるとは思ってもいなかった。
さすがに、人生がまた少し変わる時に、この迷惑な同居人が仕出かしたことにスンジョは救われることになった。
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