思わぬ同居人 38
いよいよ今日はテハン大の本試験。
センター試験は満点ではなかったが、1位の得点ですでにテハン大の合格は貰ったようなものだった。
「スンジョ、大丈夫だ。」
スチャンがスンジョの肩をトントンと叩くと、頭を下げて隣に立っている母に挨拶をした。
「行って来ます。」
「頑張ってね!ハンカチは持った?ティッシュは?」
「大丈夫だよ。小さな子供じゃないから・・・・」
ギドンも、親友の息子が本試験に挑むからと、店に行く時間を遅らせて見送る為に待っていた。
「落ち着いてな・・・・弁当がいると聞いたから、お母さんの物みたいにお洒落じゃないけど、おじさんが作った弁当だ。消化に良い物だけを入れたから・・・・」
ギドンが弁当の包みを渡すと、スンジョはそれを大切に受け取った。
「ありがとうございます。」
家族以外の人が同居することになった時は、他人が入り込むことに戸惑いもあったが、自分の息子のように気を使ってくれるハニの父は、自分の父の親友だがいてくれるだけで心が穏やかになる人だった。
「お兄ちゃん、頑張って!絶対に受かるから!」
「ああ、ありがとう・・・じゃっ・・・・」
何か言いたそうにしているハニをチラッと見て、スンジョはそのまま玄関を出て行った。
パタンとドアが閉まると、テハン大を受ける気になったことを安心したグミとスチャンはホッとした顔をした。
ハニだけは緊張の面持ちで、急いでコートを着てカバンを持って玄関で靴を履いた。
「ハニちゃん?」
「おじさん、おばさん、スンジョ君がテハン大の門をくぐるまで付いて行って見届けます。」
「いいよ、そんなことをしなくても。」
「いえ!やらせてください。」
良いも悪いも、ハニは数日前からスンジョがテハン大の門をくぐるまで付いて行ってみるつもりだった。
スンジョに見つからないように、距離を取って時々物陰に隠れて見たりしながら、まるでストーカーの如く貼り付いていた。
ハニはスンジョが知らないと思っていたが、スンジョはハニが最初から付いて来る事を知っていた。
「アイツ、オレが気が付いていないと思っているのか?朝から、出掛ける服装をしていればどんなバカでも判るぞ・・・ああアイツはバカだったか。」
自分の後ろを付いてくるハニの足音を面白がって聞きながら歩いていると、車が急ブレーキを踏む音がして何かにぶつかった音が聞こえた。
一瞬嫌な予感がして歩を止めハニの足音を聞くが、さっきまで聞こえていた足音が聞こえなかった。
「女の子が車に引かれたぞ!」
ハニ?
スンジョは、後ろを振り向いたが付いて来ていたハニの姿はなかった。
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