思わぬ同居人 40

親が望む大学に進み、親が望む進路を歩いて行く。 

それが一番いいのかもしれないが、何か気持がスッキリとしないままテハン大に向かっていた。 

ハニが車と接触事故を起こしたのは、オレを故意にテハン大に行かせない様にしているとは思っての事ではないのは判っている。 

このままテハン大に行けばまだ間に合う時間。

 ハニのこの事故は、オレに考える時間を与えているのではないだろうか。 


病院の建物から出ようとしていたスンジョは、足を止めて出口を通らないで来た方を振り返った。

 スンジョは何かを決心した。

 自分が決めた道を探そう。 


以前から誘われていた大学があった。 

偏差値は特に高い大学ではなかったが、入試担当の職員が何度も自分を訪ねて話をしてくれた。

 華やかしい話は特になかったが、新しい事を取り入れた大学の方針に少し興味はあった。 

『大企業に何人が就職した、この有名企業の創立した人は当大学の卒業生だ』と、そんな話をされてもどう返事をしていいのか判らなかった。

 オレは大学を卒業して、就職をする事になっても親父の会社に行く事に変わりはない。  


総合学科・・・・二年間好きな勉強をして、その後に将来進むべき道を目指す学科を選ぶ。

 進むべき道は親父の会社だと決まっているけど、それでもまだ知らないことがあるような気がする。 

ハニが言うように、大学に進んで自分探しをしてみるのもいいかもしれない。 

それなら行く大学はテハン大じゃなくても別にいいのだと思う。


 ラウンジでコーヒーを買い、ギドンが作ってくれた弁当を食べ終わると、テハン大を受けない事にしたスンジョの顔は後悔も無いスッキリとした顔をしていた。

 ハニが入院している部屋には、きっと連絡を受けたグミとギドンも来ているだろう。 

今頃はテハン大の試験を受けていると思っているから、自分が入って行けば驚くことは判っていた。 

少し開いたハニの病室のドアから、グミとギドンが何かを言っている声が聞こえた。

 ハニが気が付いたのだろう、ギドンが泣いている声とグミの喜ぶ声が廊下にまで聞こえている。



「おばさん、スンジョ君は?」

 「私たちが来た時にはいなかったから、きっとテハン大に行ったと思うわ。まだ十分に間に合う時間だったから。」

 「よかった・・・・私ったらまたスンジョ君に大変な事をしてしまったと思った・・・・・スンジョ君!」 

話している内容を聞いて、時間を置いてから開ければよかったのかもしれないけど、オレはそんな気の利いた人間ではない。 


「スンジョ、テハン大に行ったのじゃ・・・・」

 「行かなかった。ラウンジでおじさんが作った弁当を食べてコーヒーを飲んで来た。」 

ハニは、オレがテハン大を受けに行かなかったことを、自分の所為だと言って手が付けられない程に泣き叫んでいた。

 『ハニの様子に問題が無いのなら店が気になるから』と言っておじさんが店に行き、お袋はハニの着替えを取りに行くからと言って家に帰った。

 病室に泣いているハニとそれを黙って見ているオレ。

 何かを声掛ければいいが、掛けてもハニは泣くだけでオレは何をしてあげたらいいのか判らなかった。 

何でも出来ると思っていたけど、オレが出来ない事は人を思いやって気づく事だと判っているのに、なぜお袋にオレが見ているから安心して家に帰っていいと言ったのだろうか。 


昼過ぎに、ハニの友達のミナとジュングが見舞いに来たが、会いたくないと言って、布団から顔も出さずにずっと泣いていた。 

お前は人のために涙を流すことが出来る人間なんだな。 

オレは人のために何かをした事は一度もないし、そんな気にはならない。 

テハン大に行かない理由は、お前が事故に遭ったからじゃないから。

 だから何も気にしなくていいとは言えなかった。 

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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