思わぬ同居人 41
退院してからも、部屋に籠ったまま出て来ないハニ。
オレがテハン大を受けなかったことに責任を感じているのだろう。
「ハニちゃんは今日も部屋から出て来ないのか?」
「朝食も食べないし、痩せちゃったりしてかえって身体を壊すのじゃないかと心配だわ。」
「ハニなら、夜中に起きて冷蔵庫の中を見てたよ。お化けかと思って驚いた。」
「夜中に起きて食べているのなら大丈夫だけど・・・・・スンジョ、あなたがいけないのよ。テハン大を受けないだとか言うから。」
「オレのせいか?アイツが勝手に付いて来て、勝手に車とぶつかったんだ。運転手もいい迷惑だよ。」
「スンジョ!」
大人気ない言葉だとは分かっている。
自分が子供みたいに『受験をしない』と言っていたから、アイツはそんなオレを心配して付いて来たのだ。
途中まで、アイツの足音を聞きながら試験会場に向かうのを結構楽しんでいたじゃないか。
お前がこの家の灯りになっているのか、部屋に籠っているのにリビングで寛ぐ時も夕食を全員が囲んでいる時も、お前がいないだけで家の中が暗く感じる。
お袋がオレのせいだと騒いだり、ウンジョが『ハニはとことんお兄ちゃんを苦しめている』と言ったりして騒いでいても、ハニが事故に遭いオレがテハン大に行けなくなった事は誰のせいでもない。
みんなが希望した大学に行けないのを人のせいにして逃げるのはいけない事。
テハン大に行かないのはハニのせいではなくて、オレが自分で決めた事でテハン大の試験日の前にそれは決まっていた。
「よぉ!」
キャリーバックをまた引きずって、家族に見つからないように出て来たのか、スンジョが声を掛けると飛び上がって驚いた。
「び・び・び・びっくりした!スンジョ君どうしてここに・・・・」
「自分の家だからな、いたい場所にいただけだ。で・・・・またこんな時間にどこに旅行に行くんだ?」
「私、スンジョ君を励ますどころか、取り返しのつない事をしてしまって・・・・もうどうしていいのか判らなくて・・」
「で、家出をするところだったのか?」
図星なのか、黙ってうなずくアイツにオレなりの慰めの言葉を掛けようと思った。
「娘一人父一人でここまで来たんだよな・・・ハニとおじさんは。」
「スンジョ君?」
「家出をするのなら、おじさんも一緒に行かないと困るんじゃないのか?お互いに助け合って来たのなら。」
「そ・・・・・」
あ~おかしい・・・コイツはオレの捻くれた言葉をストレートに受け止めるからな。
純粋と言うのか素直と言うのか・・・・単純なんだろうな、オレと違って。
「私だけの責任だから、パパは判ってくれる。スンジョ君がテハン大に行けなくなって、私がパラン大に決まるのなんて、申し訳なくて・・・」
申し訳ないね・・・・オレも申し訳ないけどもう少しお前をからかわせてもらうよ。
「別に、浪人をすれば来年テハン大に行けるだろう。」
「スンジョ君?」
キラリと嬉しそうに目を輝かせるハニに、スンジョのいたずら心は静まらない。
「でも、浪人はしないよ・・・・・これ・・・・」
A4版の封筒をハニの目の前に差し出すと、驚いた顔をしてオレを見上げた。
「見てもいいの?」
「どうぞ。」
「パラン大学総合学科自由専攻・・・・・私は社会科学部だけど・・・・入学金授業料・・・・0ウォン・・・? 入学予定者名・・・ペク・スンジョ?え・・・」
「もうだいぶ前から誘われていた。大学を卒業後はそのまま研究所に残ってもいいし、大学院に進んでもいい・・・また、留学をするのなら学校が負担する。いずれはパラン大の教授の席も用意する・・」
「じゃぁ・・・・」
「お前とまた一緒の学校だ。」
「本当?本当なんだね!」
持っていた封筒をハニから受け取ると、ハニはオレの手を握って飛び上がって喜んでいた。
「私、保証するよ!大学生活の4年間は、刺激的な生活をする事を保証するから。」
十分刺激的すぎるよ、お前のその感激の仕方は。
これ以上、今よりも悪い方向には行かないから、お前のその刺激的にしてくれる大学生活を楽しみにしているよ。
「じゃ・・オレは身体が冷えて来たから中に入る。お前も元気でな・・・・・」
「あの・・・・」
「何だよ。」
「私・・・戻ってもいいの?」
「ご自由に・・・おじさんが寂しがらないのなら構わない。」
スンジョはそう言うと、ハニのキャリーバックを持って家の中に入って行った。
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