思わぬ同居人 43
夕食のテーブルに着いている人間が少ない?
「ハニは、夕食は食べないのか?」
「なんだかね、用事があるからしばらく夕食はいらないって・・・・どこかで食べて来るみたい。」
「ふぅ~ん・・・」
「これ、食べてもいい?」
「だめよ!このおかずはハニちゃんが好きだから、明日の朝に温め直して出してあげたいから。」
「ちぇっ!」
消化授業に行っているからって、さっそく夜遊びを始めたのか?
親父とお袋とウンジョの4人で食べる夕食も久しぶりだな。
おじさんは店があるから賄を食べて帰って来るから、いつもは5人で食卓を囲んでいる。
お袋は食べながら『ハニが誰かに誘惑をされたらどうしよう』だとか、『痴漢に遭ったらどうしよう』だとか言っているが、どこに行ったのかを聞いても知らないと言う。
夕食が終わって、お袋が片付け物をしてもまだ帰って来ない。
「いつもの缶コーヒーはある?」
「冷蔵庫に入れていない?」
「無いよ。買い置きの所にも無かったけど・・・・」
別に特に飲みたいわけでもなかったが、いつもこの時間にリビングでお袋と話をしているハニの声が聞こえないと、用も無くダイニングに降りて来たくなった。
「明日になったら買って来るわ。」
「いいよ、暇だからコンビニに行って買ってくるから。」
それほど飲みたいわけでもないのに、ハニの声が聞こえないから退屈で仕方が無かった。
気晴らしにコンビニにでも行って、帰って来る時にハニでもいたら一緒に帰って来てやるか。
冬のこの時期は、どこの家も窓を閉めているから、変質者が出没をしてハニが叫び声をしても聞こえない。
スンジョは近くのコンビニに行くが、特別な缶コーヒーでもないのに売り切れで、店員に聞くと別のコンビニになら置いてあると教えてもらった。
「いらっしゃいませぇ~」
店員の声は聞こえるが、何かの作業をしながら声を出したのか、どこにいるのか姿は見えないしレジの所には店員の姿は見えなかった。
欲しかった缶コーヒーを持って行くと、妙なパーカーを着て顔が見えない店員が立っていた。
「お客さん・・・今いくら出しましたかぁ~」
「1万。」
店員は1万紙幣を奪い取るように取るとそれをレジに入れるが、パーカーのファスナーをしているからどこに入れていいのか判らないのか探っていた。
釣りを客に持って行けと・・・言っているけど・・・・
ハニ、そんな店番でいいのか?
そんな馬鹿な事をするのがハニだと、オレは気づいていたけど、お前はオレが店に入る時に、咄嗟にレジの下に隠れただろう。
見えないと思っているかもしれないが、お前のやりそうなことくらい、お前らしくてすぐに判るから。
あの姿が面白くて、オレは静かな住宅街を笑いをこらえて歩くのにどれだけ苦労をしたのかお前は知らないだろう。
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