思わぬ同居人 44
何が面白くて、あのコンビニにまた来たのだろう。
「あの・・・前にいたおかしな女の子は?」
「彼女、クビになったみたい・・・・800ウォンです。」
ヤッパリな。
客にレジから『釣りを取って行け』なんて言えば、まともな人が経営者ならクビになるだろう。
それにしても、今日も遅いけど、今度は場所を変えて違う所でバイトでもしているのか?
なんでそんなに金が要るんだ?
おじさんからこの間も追加の小遣いをもらっていたし、学校の帰りに買い食いするから小遣いが足りないのだ。
「ほら、ジュースを買って来たよ。」
「ありがとう・・・」
静かな家の中。
グミもスチャンと一緒に取引先の会社の社長夫妻と会食で、夕食は何かデリバリーで食べるように言って夕方から出て行った。
「ウンジョ、何が食べたい?」
「う~ん、この間はピザを食べたから・・・・チキンが食べたい!太陽チキンのチキンがいいよ。」
「太陽チキンか・・・判った。」
夕食の時間で混んでいるだろうと思って、太陽チキンに電話を掛けると、意外に早く応対してくれた。
チキンだけでは夕食にならないからと、冷蔵庫の中に入っている残り物で簡単な物を作っていると、インターフォンが鳴らされた。
「来た来た、チキン屋さんだよ、お兄ちゃん。」
「はい・・・」
<太陽チキンですが・・お届けに参りました。>
「遅いじゃないですか、配達時間が電話して30分も掛かってますよ。」
<すみません・・道路が混んでいたもので>
この声、変えているつもりかもしれないが、判りそうなくらいにはっきりとハニだと判る。
<ここに置いて行きますので、取に来て下さいね。>
置いておく?
「お金は要らないのですか?」
バ~カ、本当にお前はバカだ。
チキン屋だって、バイトくらい何人も抱えているだろう。
配達先を告げられても気が付かないお前のその耳は一度検査でもしてみないといけないな。
スンジョが門の所に行くと、エンジンをかけっぱなしにして背中を向けている女の子が立っていた。
コンビニで見たおかしなパーカーを着て、フルフェイスのヘルメットをかぶっていてもお前だとバレバレだ。
「毎度ありぃ~」
代金を支払うと、顔を見せない様に急いでバイクに乗って店舗の方に帰って行った。フラフラとしながら、スピードを出して走って行くチキン屋のバイクを、見えなくなるまでスンジョはクスクスと笑いながら見送っていた。
何にお金がいるのか知らないが、一週間毎晩ハニは遅い時間にバイトを終えて帰って来ていた。
ベッドで横になっていると、ハニが帰って来るまでは心配で眠れなかったが、玄関から入ってからグミと話している声を聞くと、スンジョは安心したように深い眠りに入って行った。
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